世界の隠匿された富〜最大のタックスヘイブンとしてのイギリス(1)

タックス・ジャスティス・ネットワーク(TJN:tax justice network)のメンバーであるニコラス・シャクソンとアレックス・コブハムが雑誌「Prospect」に書いた「世界の隠匿された富」(The world's hidden wealth)がTJNのサイトにアップされています。かなり長文の論文ですが、タックスヘイブンの実態や役割についてよくまとめていると思いますので、要旨を何回かに分けて紹介します。

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世界の隠匿された富 イギリスは世界をオフショア金融へと引き入れている〜自らのタックスヘイブンを改革しなければならない

ニコラス・シャクソン、アレックス・コブハム

イギリスにとって、パナマ文書の暴露で明らかになったことは、キャメロン首相がそれに関与していたこと、およびモサク・フォンセカ法律事務所が顧客のためにペーパーカンパニーを設立したお気に入りの地域は、パナマではなくイギリスの海外領土であるバージン諸島だったことだった。他のタックスヘイブンであるケイマン諸島、バーミューダ、ジブラルタルも同様にイギリスの海外領土である。もっとイギリスに近い王室属領のジャージー島、ガーンジー島、マン島もタックスヘイブンである。

オフショアはあらゆる種類の金を汲み上げている。中には、単に設立が容易だという理由でオフショアにあるが完全に合法的なビジネスをしている企業もあるが、規制や税逃れをしたい企業、さらには犯罪で得た利益を隠すための企業もある。しかし、その境界はあいまいだ。

タックスヘイブンはかつてはスイスの銀行が優勢だったが、1970年代以降、イギリスの海外領土や王室属領に移ってきた。オフショアの規模を推計するのは、何がタックスヘイブンなのかについて合意がないことやその秘密性のゆえに困難だが、専門家によれば7.6兆ドル、あるいは24〜36兆ドルだという。

オフショアの所在地は5つに分かれる。

①イギリスのネットワーク:海外領土や王室属領、バハマやクック諸島のような英連邦国などで、ロンドンのシティとも繋がっている、このうちカリブ海地域は南北アメリカ、シティの銀行など、王室属領はヨーロッパ、旧ソ連地域、アフリカなどを顧客にしている

②ヨーロッパ:秘密性という点でスイス、ルクセンブルグ、リヒテンシュタイン、アンドラ、税対策やオフショア金融でルクセンブルグやアイルランドがあげられる

③アジア:香港、シンガポール以外にもマカオやマレーシアのラブアンなど

④アメリカ合衆国:デラウエア州やネバダ州では数百ドルでペーパーカンパニーを設立でき、真の所有者を完全に隠すことができる

⑤新たなタックスヘイブン:モーリシャス(アフリカに投資するインドや中国の投資家に人気)、リベリア(オフショア船籍登録デャアメリカのバージニア州に置かれている)、セーシェル、ベリーズ、セント・キッツ、ネビスなど

実際に企業活動が行われている地域とは別の場所に利益をう移すという点では、アイルランド、ルクセンブルグ、オランダ、バーミューダ、ケイマン諸島、スイス、シンガポールなどが有力である。

問題が二つある。一つはこうした税サービスが多国籍企業の租税回避を可能にすること、もう一つは金融が国境を越えて溢れ出していることが世界を豊かにしているのかどうかということである。

多国籍企業がエクアドル、ドイツ、タックスヘイブンに企業を設立し、エクアドルのバナナをドイツに輸出すると仮定して、利益を移転する例を挙げてみよう。エクアドル企業が1000ドルでバナナを購入し、タックスヘイブン企業に1000ドルで販売する、続いてタックスヘイブン企業が3000ドルでバナナをドイツ企業に販売し、ドイツ企業はスーパーに3000ドルで販売する。こうすると、エクアドルとドイツでは利益ゼロとなり、2000ドルの利益を得ているのに税金はゼロになる。

もちろん現実の取引はもっと複雑だが、結局は税当局とのイタチごっこをすることになる。(続く)

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