COP22〜グリーンウォッシングと環境正義のあいだ

COP22とモロッコの社会運動について書かれた記事を紹介します。筆者はモロッコの大学院生とのことです。原文(英語)はこちらから。

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モロッコにおけるCOP22:グリーンウォッシングと環境正義のあいだ

by Fayrouz Yousfi

気候変動会議は一応各国間の交渉のためであるが、実際には新自由主義的政策を追求するもう一つのお芝居である。

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世界がドナルド・トランプ当選のニュースに当惑しているときには、モロッコでCOP22が開かれているという事実に気がつかなくても許されるかもしれない。

モロッコは、11月8日から18日にマラケシュにおいて、気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)のもとで開かれた年次環境総会を主催している。

招待リストには、世界の指導者、政府当局者、国際機関、専門家、市民社会のグループが含まれ、気候金融やグリーンエコノミーについて討論するために集まっている。この10日間以上にわたって、UNFCCCの加盟国は2015年パリ合意目標を達成し、温室効果ガスを削減し、気候変動に対する世界的アクションを起こすための行動に集中するだろう。

したがって、モロッコは西側諸国にとってマスコットの役割を果たすことになる。COP22では、モロッコはグローバル・サウスの主要な問題を無視する一方で、工業国経済の利益になるだけの問題に取り組む会議を準備してきた。

再生可能エネルギー政策を強調しながら、モロッコは国際社会に対して、自らを緑のための行動者として売り込み、グリーウォッシング対話を促進している。その一方では、国内の環境問題では、資源開発から土地収奪・水質汚染・大気汚染に至るまで、完全に話していることと相反している。

さらに悪いことに、政府は環境破壊に加わっているだけでなく、国内の抵抗努力を弾圧している。

 

イミデール:5年間の抵抗

 

マラケシュの赤いカーペットから300km離れたところで、こうした抵抗の一つを見ることができる。イミデールの南東地域には、「On The Road 96」と呼ばれる運動が抗議キャンプでのワークショップと並行して、第1回国際環境正義映画祭を開いている。

活動家によれば、モロッコ政府と軍隊が彼らの抗議キャンプを弾圧しにやってきたときにコミュニティが反撃した年にちなんで名付けられた「On The Road 96」は、大気・水・土壌汚染を引き起こした銀鉱山による否定的な環境への影響と闘うために2011年に作られた。

その運動のメンバーであるモハ・タウジャは、地元の人々が環境問題とその解決策についての討論の中心にいるべきだと主張する。

「民衆にわれわれが考えて行動する主体だと伝えるために、われわれはイミデールにおいて多様な活動を準備することを選択した」とタウジャは話した。「これらの問題とともに生活し、被害を蒙っているのはわれわれであって、国連やマラケシュ会議の参加者ではない。」

「On The Road 96」によるとりくみが焦点を当てている中の一つがSMI(イミデール冶金会社)である。その会社はカサブランカに本拠を置くマナゲム社の子会社で、その地域の鉱山から銀を採掘している。

「われわれの要求と目的の一つは、安全な環境を持つ権利だ。われわれはSMIの採掘活動によって引き起こされる汚染がますます悪化していることに反対して闘っている」とタウジャは話した。「この連中は地下水を強奪し、土地を独占し、農業に基礎を置くわれわれの地域経済を殺している。」

イミデールの村人たちが鉱山に水を供給する主要なポンプ場を占拠した2011年以来、地域の人々は会社による鉱山開発に抵抗を続けてきた。

「すでに5年5ヶ月のあいだ、われわれのエネルギーを消耗させる当局者の頑強さにもかかわらず、イミデールの村人の抵抗は続いている」と彼は言った。

その運動は、ハッシュタグ#300KmSouthを用いて、COP22に焦点を当てながら彼らの闘いに国際的なメディアや社会の関心を引こうとしてきた。彼らはまた、マナゲム社からの有毒廃棄物がいかに彼らのコミュニティに影響を与えているかを説明する短いビデオを公開した(訳注:このビデオは、ブログでリンクを貼って公開中です)

 

土地収奪

 

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イミデールは、モロッコにおける環境不正義の唯一の例ではない。ラバトのお上品な地区の真ん中で、ドゥアル・オウラド・ドゥリム部族のメンバーが、ラバトに本拠を置く不動産会社のリアド建設会社による農地収用と闘っている。ドゥアル・オウラド・ドゥリムの住民たちはかつて、特に肥沃な農地90ヘクタールに住んでいた。彼らは主に小規模農民や畜産家として生活していた。そして彼らの農園は数多くの果樹園(オリーブ、バナナ、アプリコット)からなっていた。彼らの果物や野菜は、かつては首都の市場に供給されていた。

2014年12月18日の朝、モロッコ警察とトラクター、ブルトーザーがドゥアル・オウラド・ドゥリムの住居を完全に破壊し、126家族をホームレスに追いやり、何の補償も行わなかった。彼らの場所にはラバトで最も金持ち地区の一つが建設された。

そのときからドゥアル・オウラド・ドゥリム部族は、彼らの土地に建てた間に合わせのキャンプやビノールの防止シートの中で暮らす一方で、追放に抗議するデモを組織し、居住権を求めてキャンペーンをおこなってきた。

「もし独占され、コンクリートで固められなかったら、ギーシュ・ルードゥヤ(ドゥアル・オウラド・ドゥリムの村を含む部族)の土地は、ラバト市が模範的なエコロジー都市になるのを実際に推進できたのだが」とソラヤ・エル・カフラウィは語った。彼女は社会学者で、この3年間ドゥアル・オウラド・ドゥリム部族の闘いを支援してきた。

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このような土地収用と農地からの部族追放は、1990年代からモロッコ政府が採用した新自由主義的政策による影響の一つである。

モロッコは一方では国際的環境保護リーダーの役割を果たし、他方では何十年間もこのように不動産会社の利益のために、共有地を民営化し、先住民コミュニティを攻撃対象にしてきたとエル・カフラウィは言った。

「COP22を歓迎することによって、モロッコはアフリカ規模でのエコロジー・リーダーになりたいと思っている」と彼女は話した。「しかし、裏では、このエコロジー的マーケティングが、市民に国内資源へ公平にアクセスする権利を保障できないというモロッコの無能力さを隠している。モロッコ人に自らの富から利益を得る権利を保障するための民衆主権政策は何も講じられていない。」

 

モロッコの活動家はCOP22をボイコットする

 

そうした状況に抗議して、ATTACとモロッコ人権協会は、環境保護のために活動している団体・労働組合・市民社会の連合体である「気候正義のためのモロッコ連合」から脱退した。もともとその連合の最初の目的は、モロッコにおける気候不正義を告発することだったが、その後モロッコ政府の非公式な代弁者となった。

そこで、COP22に参加する代わりに、ATTACは他の団体・人権団体・労働組合とともに、オルタナティブ・イベント〜COP22に伴う民主的ネットワーク〜を作った。その目的は、ATTACの声明によれば「わが国における政治的・経済的権力を握る人々や国際的な債権者・援助提供者から独立した民主的環境運動を打ち立てること」である。

「気候変動問題は、専門家が独占する問題ではなく、政府間交渉に限定された問題でもない。われわれにとって、気候変動は市民の日常生活の中心にある問題であり、市民たちは社会・環境の条件の劣化を引き起こしている自由主義的政策との決別を求めている。」

 

フィクリの死は火を付ける

 

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COP22の一週間以上前、当局が没収したメカジキを取り戻そうとしてゴミ収集車に巻き込まれたムフシン・フィクリの悲劇的な死は、モロッコ民衆が抗議のために集まることのできる事件だった。

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最近の出来事を考えると、20011年アラブ革命で掲げられたのと同じテーマ〜尊厳と社会的正義を求める呼びかけ〜が今でも公平な環境政策を求める呼びかけの核心的スローガンになっているのは偶然の一致ではない。

COP22会議をさらに驚くべきものにしているのは、グローバル・サウスで象徴的に開かれてはいるにもかかわらず、その全体テーマすなわち気候金融が、温室効果ガスをあまり排出していないモロッコや他の南の諸国の関心事ではないことである。

もう一度、COP22は、国家間交渉の場とされているこれらの集まりが、どの程度まで南に適用する新自由主義政策を追求するもう一つの猿芝居であるかをわれわれに示している。

もしマラケシュが南の声によって牽引された真の気候交渉の場ならば、議論は補償や北が南に負う環境債務の返済、そしてモロッコが南に300km離れた保護されないコミュニティに負う環境債務の返済に焦点を当てるべきである。

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