「トランプ当選後の東アジアはどうなる」〜ウォルデン・ベロさん講演

1月21日、ストップ!TPP緊急行動・関西主催で、「トランプ登場で東アジアはどうなる」集会がエルおおさかで開かれました。この集会で、ウォルデン・ベロさんが「トランプ当選後の東アジアはどうなる」というタイトルで講演しました。この講演内容の要旨を掲載します。文責は、ATTAC関西にあります。
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「トランプ当選後の東アジアはどうなる」

ウォルデン・ベロさん

TPPとは何だったのか?①TPPの基本的問題点は、ISD条項を使って国の主権が奪われていくことにある。発展途上国におけるもう一つの問題は、知的財産権が強化されることだ。TPPは自由貿易で関税を下げるのではなく,知的財産権の独占、投資の自由化による企業の力の強化に本質がある。②TPPは、通常の経済協定ではなく,第1の経済大国・アメリカと第3の経済大国・日本によって、第2の経済大国・中国を封じ込めるという地政学上の意味を持っていた。③オバマ政権によるアジアへの旋回という国際戦略の経済的な側面を担うものである。
TPPに対して各国で反対運動が起こったが、二〇一六年中頃にはその声は小さくなっていた。ここにトランプのサプライズが起こった。これは実はサプライズではなく、貧困層の増えている地域で、従来は民主党が強かった地域が共和党に移った結果だった。この地域の労働者階級が民主党を見放したのだ。オバマは失業や所得減少に何の手も打たなかったうえに、TPP推進でさらに問題を作りだすと彼らは考えた。ヒラリーはTPPに反対しているが、当選したらTPPを推進する側に回るだろうと彼らは考えていた。

トランプはTPP離脱という約束で当選したので、われわれはそれを守らせなければならない。安倍の東南アジア訪問は、こうした状況への対応を協議するためだった。安倍がやろうとしたのは、オーストラリアとインドネシアでTPP復活の可能性があるかどうか、探ること、そしてフィリピンでは、アメリカの太平洋戦略の中でフィリピンの位置をさぐることだった。

ドゥテルテもトランプ登場にはびっくりした。ドゥテルテは、アメリカとの同盟関係清算をおこなおうとしていた。安倍はこれを聞いて慌てた。日本と並ぶアジアの戦略的要所が揺らいだから。ドゥテルテを安倍は招待したが、中国が介入し、中国に先に来させた。ドゥテルテは東アジアの力関係に敏感に反応したのだ。

トランプが選挙で言っていたのは、マフィアのショバ代のように、防衛負担費用を取りたてることである。

アメリカの経済政策について、トランプは、中国を念頭に置いて為替操作をやめさせること、不当な取引をやっている国からの輸入に関税をかけることの二点を主張した。これは保護主義のように見える。メキシコ国境の壁建設のような戦争好きのメンタリティで、経済政策でも同じように関税の壁を作ろうとしている。安倍は、トランプのトヨタへの言及に驚愕した。トランプは、個人の資質、メンタリティが歴史に影響を与える例になるだろう。彼は現実を自分の政策に合わせようとしている。トランプの予想外の勝利によって、現実を変えることができるという彼の確信は強まっている。

TPPの危険性をわれわれの運動を通じて明らかにしてきたが、その成果をトランプが持っていってしまったのは残念だ。世界的にもいえることが、グローバリゼーション、自由貿易協定に反対する闘いは左翼が中心になって進めてきたが、その成果を手にしているのは極右勢力だ。

トランプのもとで、アメリカは保護主義に向かうことを覚悟しなければならない。もう一つ覚悟すべきことは、軍事面でも経済面でも、同盟国と一緒にやるのではなく、単独行動主義を取ろうとしていることだ。一九三〇年代の孤立主義と似たような傾向が台頭している。単独行動主義と孤立主義は矛盾しない。

私たちは、いま「第二次大戦後」と言われる時代の終わりに直面している。アメリカが自由主義の国々を守るために、自分たちの資源を世界的に配るという体制の終わりだ。アメリカ国内で、中産階級、労働者階級を中心に、アメリカ優先という考えが広まっている。アメリカのティーパーティー、フランスの国民戦線など、世界中で極右、ファシスト的傾向が強まっている。一九二〇年代,三〇年代以来の現象だ。リベラル民主主義派が後退している。そして、伝統的な右派・保守勢力が右に向かう流れに飲み込まれ,ますます右の政策をとっている。これは人々の怒りの表現である。

私の国でも同じことを既に体験している。フィリピンの大統領はファシストである。麻薬常習者は処刑するしかないと公言し,実行している。しかし、国民の84%が彼を支持している。つまり、リベラル民主主義に裏切られたという思いを持つ人々が支持しているのだ。同じような力学が世界を支配している。人権という言葉をネットにアップすると、世界中から避難の書き込みが殺到する状況になっている。

いま起こっている事態は、反グローバリゼーションが軸だが、極右がその成果を全部持っていっているのが現実である。トランプの台頭、ドゥテルテの台頭、イギリスのEU離脱は偶然ではない。リベラル民主主義とグローバリゼーションに対する世界的な怒りの現われである。

私たちの課題は、第一に大衆運動をもう一度作り直すことだ。他に選択の余地がない。人々が本当に関心のあることについて運動を作るしかない。それに失敗すれば、後世の人々からは左翼は裏切ったと言われるだろう。二つ目には、われわれの側の魅力的な対案を示す必要がある。三つ目には、グローバルな反ファシスト運動を作らなければならない。というのは、いったん権力をファシストがとると、長期間権力を維持する可能性があるからだ。

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