「いま大阪のあり方を問う」〜中山徹さん講演要旨

2月13日、エルおおさかで「いま大阪のあり方を問う 学習集会」が開かれ,会場は110名の参加者で一杯となりました。主催は実行委員会で、ATTAC関西グループも参加し、司会を担当しました。
この学習集会でおこなわれた中山徹さん(大阪自治体問題研究所理事長)の講演「いま大阪のあり方を問う」の要旨を掲載します。

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大阪のあり方をめぐって、特別区,総合区,カジノ,万博といった問題が一杯出てきている。今後の大阪の方向性はこれでいいのか、お話していきたい。
維新は、全国では議員数を減らしているが、大阪ではまだ大きな影響力を保っている。茨木市議選では議席を減らしたが、柏原市長選挙では勝利したように。

維新が進める3つの施策①〜都構想と総合区

都構想については決着がついたはず。ところが維新は、2月議会で法定協議会を立ち上げ,2018年に住民投票をやりたいと言っている。大阪都構想を軸に大阪が動いていくのは間違いないが、何のために都構想をやるのは今一つわからない。住民投票の前には「二重行政をなくすため」と言っていたが、二重行政ではないことが明らかになっている。今は、二重行政としては府大,市大くらいしか言ってないが、別に大阪に大学が2つあってもいいと人々も思っているはず。これを二重行政と言うのなら、阪大も含めて三重行政と言うことになるのか?
都構想は、大阪市の解体がポイントだ。日本第2の政令指定都市を解体し、大型開発、経済対策の権限・財源の一部を大阪府に合法的に移し、カジノや万博に使いたい。そのために大阪市をなくすということだ。

維新が進める3つの施策②〜カジノ万博

維新は、カジノ誘致を大阪の経済対策の最大ポイントに据えている。なぜ博打に頼らないといけないのか疑問だが、カジノと万博をセットにして、オリンピックの5年後に万博をやるということで世論を誘導しようとしている。今後のスケジュールを考えると、この春に政府で万博を決めて万博協会に立候補申請し、パリが競争相手になるが、来年秋に開催地が決まることになる。カジノについては、カジノ実施法が決まれば、立地先の選定に入る。現在のところ、北海道、横浜、大阪,長崎が有力候補と言われている。今の政府は、維新を巻き込まなければならないので、大阪の可能性は大きい。維新は、計画を1年前倒しにして、2023年カジノ開設を想定している。

維新が進める3つの施策③〜市政改革プラン2.0

吉村市長は、市政改革プラン2.0を打ち出している。この中味は、市民向けの施策を大幅に削り、その予算を減らして、財源確保しようとするもの。地下鉄の民営化議案を2月市議会に提出して、三分の二の合意を得ようとしている。地下鉄は市の財産ではあるが、府民が運賃を負担して運営されている。さらに、水道の民営化、住吉病院の民間への移管、幼稚園の民営化、小中学校の統廃合なども進められようとしている。

3本の矢をまとめる副首都ビジョン

これらが維新による3本の矢だ。その先にどこを向いているのかというと、副首都ビジョンになる。しかし、このビジョンを読んでも何をしたいかがよくわからない。そもそも世界中でどこにも副首都を持つ国はない。維新は、大阪を西日本の首都にすると言っている。しかし、こんなことを九州の人に言ってもバカにされるだけ。大阪でしか通じない議論である。府民・市民をだまそうとしている。維新は「副首都にするにはもっと活性化が必要」だと言って、この3本の矢を推進しようとしている。全く中身のない空論で、都構想の二重行政批判よりもひどい。

維新延命策としての都構想

都構想は、維新の「一丁目一番地」なので、維新の存在理由がなくなるから、まだ都構想を掲げているのではと疑う。住民投票の結果(投票率66%、反対70万人)を無視するのは前代未聞だ。もう一度やらして欲しい、何回やっても最後に勝てばいいと言うのでは、オセロと同じだ。民主的な政党であれば、ラストチャンスだと言っていたのだから、市民の意思を尊重すべき。違法行為ではないが、維新としての反省、大阪市としての総括(なぜ市民がノーと言ったのか)など説明責任があるはずだ。もっと真剣に反省・総括することが必要。勝つまでやるのでは困る。

特別区、総合区、ブロック、地域自治区

今の議論の中では、特別区、総合区、地域自治区、ブロックなど、いろいろ出てきていてややこしい。前回の住民投票でもよく分からないで投票した人が多いのではないか。今回はもっとややこしい。
*特別区〜大阪市をなくして、特別区という基礎自治体を新たに作ること。大阪府○○区になる。特別区は市町村と一緒だが、東京の特別区では「もういや」という声が上がっている。というのは、特別区の権限が非常に小さいからだ。東京では、大阪がなぜ今さら特別区なのかわからないと言っている。
*総合区〜大阪市は残る。行政区よりは権限が少し強い。行政区の区長は市職員だが、総合区の区長は特別職になる。市役所の部長よりは権限が強い。市に意見も言える。しかし、区長は公選ではなく、区議会もない。公明案では、8区に合区したうえで総合区にする。総合区は、市議会の判断だけでできる。維新は、まず公明案の総合区にして、住民投票で総合区か、特別区かを問うとしている。
*ブロック〜自民党は、24行政区をそのまま総合区に変える案。その上にいくつかの総合区を束ねたブロックを置いて、ブロック長も置くとしている。
*地域自治区〜公明案では、総合区の下に、地域自治区を設置することにしている。平成の大合併の際に、当分は合併特例区を作ったのと同じ。もとの24区は地域自治区として残す。
複雑怪奇でよく分からない。大阪をどうするというときに、急いで話をすることではない。どんな制度を作っても、市民の声を聞く気がないのであれば、意味がない。議論は否定しないが、市民が理解できないうちに、投票で決める必要性は全くない。

カジノの経済効果は本当か?

私たちは、維新に対して、制度いじりで大阪が活性化するはずはないと批判してきた。すると、維新はカジノという最悪のものを出してきた。そもそも行政のいう経済効果ほどいい加減なものはない。これまでもまともな検証は一回もしていない。いいっ放しのままだ。
維新は、2024年には、カジノ来場者1300万人、うち日本人が900万人で、カジノでの雇用効果は3.2万人、税収1200億円という経済効果を示している。本当にそんな経済効果が起こるのか?ゼロとは言えないが、プラスだけを見て、マイナスを見ていない。
たとえば、布施の駅前の居酒屋で飲んで、お金を使っていた東大阪のおっちゃんが、カジノへ行ってお金を賭けてすってしまったとすると、その金はいままでは地元の居酒屋で使っていたもの。カジノは、よそで使っていたお金をかき集めて、カジノで使わせるだけだから、カジノで雇用は増えても、地域の雇用が減る。まわりでマイナスの雇用効果が起きる。900万人が普段地域で使っていたお金をカジノで使うことになる。
マカオでは、中国での締めつけのため、中国の富裕層が来なくなっている。ラスベガスでもカジノの売上げは減っている。アジアの各地でカジノを作ろうとしている。その中で本当に日本にまで来てくれるのか?富裕層が来ても、お金を落とすのはカジノでだけ。同様に、カジノで税収は上がっても、よその地域の税収は減る。
カジノがもたらす負の影響は大きい。カジノ中毒が必ず起きる。日本は今でもギャンブル中毒が多い。地域全体がすさんでしまう。

巨大開発で大阪はいくら使うのか予想すらできない

夢洲で作られるIRのうち、カジノはその一部で、国際会議場、国際展示場なども作る計画だ。大阪には、すでに国際会議場があるし、展示場としてインテックス大阪がある。また新しく作る計画だが、過去5年間に大阪で開かれた国際会議は180件から200件。しかし、国際会議は今後の10年間で1.7倍、国際展示会は1.5倍、イベントは1.8倍になり、さらに大阪への企業の研修旅行が4.5倍になるという予測を出している。でたらめな予測だ。中之島の国際会議場は2500人だが、新会議場は1万2000人である。国際展示場も20万㎡の予定だが、拡張中の東京国際展示場が拡張後でも12万㎡である。維新は、このぐらいにしないと世界第一級がむずかしいと言っている。
では、誰が作るのか?4つの方式を示しているが、所有はすべて行政、運営は企業という形。大阪市交通局が開発に失敗して巨額の負債を抱えたことを維新は批判している。それは正しい。でもこのIRは、交通局の事業とは桁が違う。しかも失敗は間違いない。桁違いの失敗になる。これをやって大阪を副首都にすると言うのだ。

夢洲の危険性

万博が絶対アカンとは現時点ではいえないが、夢島は絶対ダメ。第1に、防災的にきわめて問題である。大勢の人が来たときに東南海地震が起これば、どうやって避難するのか。東南海地震では大阪に最大5メートルの津波が来るとされている。防潮堤は5メートルの高さだが、津波を防ぐには1.5倍の防潮堤が必要だと言われている。現状では最大級の東南海地震で水没する。万博の最中に地震が起こったらどうするのか。
夢洲の埋め立て材料は廃棄物で、何が埋まっているかわからない。こんなところで「健康長寿」がテーマの万博とはブラックユーモアだ。万博をするかどうか、府民的議論をした上で、やるとなったら夢洲以外でやるべきである。

大阪の展望

いまの大阪を活性化させるためには、市民福祉と経済対策の両方を考えなければならない。市民福祉は削っておいて、経済活性化してから、市民福祉を戻すではダメ。同時に進めることが重要だ。それは可能なのか?可能な方法は一つだけある。
地域経済が低迷している最大の理由は消費不況である。日本では、大手企業や富裕層に富が集中している。税金を安くしないと企業や富裕層が残ってくれないというのが嘘だというのは、パナマ文書の暴露でわかった。
企業や富裕層に集中している富を庶民・中小企業に回すことが大事。富裕層にはしっかり課税すればいい。カジノで使ってもらう必要はない。富裕層と大手企業に適切な課税→社会保障の充実→雇用の拡大・安定、賃金の上昇、中小企業の振興→消費の拡大というサイクルを自治体の権限を最大限活用して作りださなければならない。格差是正と社会保障の拡充が最大の経済対策になる。自治体としてできる限りのことを追求する。カジノ誘致のために地下鉄を造る必要はない。市民の暮らしている地域で福祉に金を使い、消費を増やす施策の展開が重要だ。
市民参加の問題も大事。市民の意見をきっちり受けとめることができたら、制度いじりは必要ない。市が市民の意見を聞かないのは、制度の問題ではない。優先順位がおかしい。今の事態は、住民投票の時以上に深刻だと思う。危機的状況だ。しかし、そのことを認識している府民,市民がまだ少ない。このままでは、本当にカジノができる、地下鉄・水道が売り払われる、大阪市が解体されることになる。本当に大変な事態になる。もし、大阪市で都構想が実現=特別区設置が通れば、堺市でも議会だけで特別区になれる。
立場は違っても、共同の動きが大事。気を抜くと負けてしまう。世論調査ではカジノは圧倒的に反対が多い。しかし、カジノ万博がくっついているから油断できない。これから住民投票以上の取り組みが必要だ。

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