地球温暖化防止に向けたパリ協定と日本の課題 地球温暖化防止に向けたパリ協定と日本の課題〜気候変動学習会講演

2月21日の気候変動学習会(ATTAC関西グループ主催)での田浦健朗さん(NPO法人気候ネットワーク)のお話を掲載します。文責はATTAC関西にあります。

地球温暖化防止に向けたパリ協定と日本の課題

事実としての地球温暖化

まず、気候変動についての基本的なお話からやりたいと思います。
IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書によれば、1880年から2012年までの気温変化は、132年間で0.85℃の上昇でした。また、2014年、2015年の世界の平均気温は、統計開始以降もっとも高く、2016年の平均気温も非常に高いものでした。
第5次評価報告書は、観測事実として地球温暖化を「疑う余地の無い」事実としています。海洋は人為起源のCO2の約30%を吸収することで、酸性化を引き起こしています。3000mより深い深海においても水温上昇の可能性があります。
太陽エネルギーによって熱せられた地表の熱を赤外線が宇宙に放射し、そのうち一部の熱が温室効果ガスで地表に戻されます。温室効果ガスが全くなければ、気温は−13℃まで低下します。その温室効果ガスが増えることで、地表に戻される熱が増えるのが地球温暖化のメカニズムです。

CO2濃度の上昇と温暖化

温室効果ガスのうち、京都議定書で対象となっているのは7種類で、もちろんCO2が一番量的に多いですが、その他の温室効果ガスは稲作、家畜の腸内発酵、半導体洗浄などでも生まれます。
CO2濃度は、上下しながら上昇しています。産業革命以降、石油、石炭、ガスの燃焼でCO2濃度が急激に上がってきました。80万年前からのCO2濃度は安定していましたが、産業革命以降急激に上昇したのです。すでに炭素排出量は自然吸収量の倍になっています。
約1億年前の白亜紀には、数百万年かけて気温が5℃上昇しましたが、これだと生物は適応できました。しかし、約6000万年前には数千年で5℃上がり、これによって生物の一部が絶滅しました。現代の上昇はこれに比べても異常です。

CO2濃度上昇は人為起源

CO2の濃度上昇は人為的か、自然起源かという問題を考えてみましょう。自然起源のみのシミュレーションでは、気温上昇の観測結果に合致しません。自然起源と人為起源を合わせたシミュレーションは観測結果と一致します。したがって、CO2の濃度上昇は自然起源でないことがわかります。
自然の変動要因としては、火山の噴火による気温低下、エルニーニョ(気温上昇)・ラニーニャ(気温低下)、太陽活動の変化などがあります。また、2万年から10万年周期の地球公転軌道の変化や自転軸の変化は、間氷期と氷河期の周期を招いています。一方で,寒冷化を唱えている学者もいますが、それを示すデータはありません。

温暖化によるリスク

温暖化による将来の8つの大きなリスクとして、海面上昇・高潮、洪水・豪雨、インフラ機能停止、熱中症、食糧不足、水不足、海洋生態系損失、陸上生態系損失が考えられます。海面上昇による被害が既に起きています。他にも、サンゴ礁の白化は水温上昇が原因です。ヨーロッパの洪水、カリフォルニアの湖が干上がっていること、アラスカの氷河の後退、フィリピンの台風被害に加えて、日本の台風でも進路変更や勢力が衰えない現象が見られます。シリア難民問題の背景にも干ばつや水不足があります。「気候変動は安全保障問題だ」というのがオバマ前大統領の主張でした。

温暖化対策の必要性とパリ協定

気温上昇の将来予測では、対策をやらなかった場合は2100年までに最大4.8℃上昇するとされています。気温上昇が2℃を超えると元に戻らないリスクもあります。CO2累積排出量と気温上昇は比例しているので、上昇を2℃に抑えるためにはCO2累積排出量を800GtC(ギガトン・カーボン)に制限しなければなりません。2011年までに515 GtC排出されており、毎年約10 GtCの排出がこのまま続けば30年で800GtCに達してしまいます。
国際交渉の歴史を振り返って見ると、1992年気候変動枠組条約、1997年京都議定書、2005年京都議定書発効、2015年パリ協定と続いています。京都議定書には充分でない面もありましたが,その後に大きな影響を与えてきたと思います。

パリ協定の影響

パリ協定には罰則はありませんが、5年ごとに国別の貢献を報告することを義務づけています。また、より高い目標の設定が必要です。パリ協定の影響として、21世紀後半までに実質排出ゼロにするために低炭素から脱炭素への移行。ダイベストメントと座礁資産、再生可能エネルギーを社会の主流にすること、デカップリング(経済成長とCO2排出量の乖離)、イノベーションなどが挙げられます。
2℃目標を守ろうとすると、化石燃料の大半は座礁資産になります。そのこともあって、化石燃料への投資から撤退を迫るダイベストメント運動が発展してします。多くの世界的企業が再生可能エネルギー100%を唱えています。先進国においては自然エネルギー電力割合が上昇しており、デンマークでは50%以上、ドイツでも30%に達しています。自然エネルギー白書によると、世界のエネルギー消費、電力消費のうち自然エネルギーの占める割合が多くなっていることがわかります。多くの国々で、GDPと温室効果ガス排出量とのデカップリングが見られますが、日本では比例しているのが現実です。それは本気で対策をやってこなかったためとも考えられます
パリ協定のあと、アフリカでも再生可能エネルギー100%をめざす動きが進んでいます。途上国では、新たに送電線を作ったりするよりは、再生可能エネルギーの方が価格が安いという面もあります。

パリ協定の発効とCOP22

パリ協定が予想よりも早く発効したのは、中国、アメリカ,インドが早期に締結したことが大きかったです。すでに132ヶ国が批准・締結して、その数は今も増えています。
パリ協定の課題として、各国削減目標を足しても気温上昇が2℃を超えてしまうことがあります。つまり目標自体が低いという現状があります。現在の目標を実現し、さらに高い目標を設定するためには、継続的なプロセス管理と強固な国際ルールが必要です。また、各国が国内対策を着実に実施することが重要です。
マラケシュでは、COP22(国連気候変動枠組条約第22回締結国会議)、CMP12(京都議定書第12回締約国会合)、CMA1(パリ協定第1回締約国会合)、いくつかの補助的会議が同時並行的に開催されました。思ったよりも早く発酵したためか、CMA1は少し準備不足だった感じは否めませんが、全体としてはトランプ当選には負けないという雰囲気がありました。その中で、日本はまたも化石賞を「受賞」してしまいました。また、日本は気候変動対策のランキングでは57位でした。ちなみに最下位の58位はサウジアラビアです。

日本の現状と課題

日本のCO2排出量は、2014年と2015年において、原発停止、省エネ導入、再生可能エネルギー固定価格買い取りの開始などで減っています。しかし、累積排出量が問題なので、着実に減らすことが大事です。日本は、すでに2015年末には2020年目標を達成してしまっています。つまり目標が低過ぎるのです。
日本では、石炭火力発電所の新設計画が48基もありました。これは世界の流れと逆行しています。1月末に、赤穂で石油火力から石炭火力に転換する計画(2基)が中止になりました。たとえ新設しても、CO2排出量から考えても稼働できないのは確実です。しかし、なかなかやめるという経営判断ができない現実があります。石炭火力には、健康リスクとして、PM2.5増加、硫黄酸化物の拡散範囲が広い、健康被害が拡がるなどがあります。
政府のエネルギー・ミックスにおける原子力発電の数値は、原発を新増設しなければ達成は無理です。エネルギー・ミックスでは石炭は増えるという見通しです!原発か、石炭か、と言う論議がありますが、石炭を残せば原発も残る、原発を残せば石炭も残るという抱き合わせ構造になっています。省エネと再生可能エネルギーの方への転換が重要です。その方が、全く対策をしなかった場合と比べると、化石燃料輸入のコストも大きく違ってくるのです。

CO2排出量削減に向けた先進的とりくみ

私たちは、パワーシフトキャンペーンをおこなっています。自治体、地域密着、再エネ事業者、生協系など推薦している電力会社一覧もHPで公開しています。
地域の先進事例として岡山県西粟倉村を紹介します。西粟倉村は、上質な田舎の創出、百年かけた森林事業、水資源による発電事業、木材の徹底利用、バイオマス・ボイラーの普及などで、化石燃料を外から買わなくてよい村作りを進めています。それによって雇用創出をはかり、人口減少が止まっています。
また、福岡県みやま市では、みやまスマートエネルギーという電力会社を設立し、地域の人に電力を販売しています。電気だけでなく、付加的なサービスも提供したり、ノウハウを他の自治体にも提供したりもしています。

まとめ

今後に向けて、大きな変革(エネルギー・社会構造)と価値観の転換が必要です。排出削減目標の大幅な引き上げのためには、原子力・石炭火力発電依存からの転換、再生可能エネルギーの推進が必要です。それにはカーボンプライシング政策(炭素排出はお金がかかるようにする)の導入が効果的だと思います。
また、大きな変革を地域から作ることも重要です。地域で、脱炭素ビジョン、条例、計画の策定をすすめることや先進的事例の紹介、ネットワーク化など、地域から流れをつくりだすために、今後も活動していきたいと考えています。

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