RCEPはなぜ日本にとって問題なのか〜ジェーン・ケルシーさん講演要旨

2月26日、神戸において、RCEP神戸会合に向けた企画として、「アジア太平洋のメガ自由貿易協定の行方と私たちの未来〜RCEP交渉の現状と問題点を語る」講演会が開かれました。
講演会では、鳩山友紀夫さん(元首相)とジェーン・ケルシー(オークランド大学教授)が講演しました、そのうち、ケルシーさんの講演要旨を掲載します。文責はATTAC関西にあります。
2017022614560000.jpg
2017022614210000.jpg

ジェーン・ケルシーさん講演

RCEP:なぜ日本にとっての問題なのか

今日お話ししたいことは次の4つです。
*RCEP(アジア太平洋包括的経済連携協定)はTPP(環太平洋パートナーシップ連携協定)とどのような関係にあるのか?
*神戸交渉会合がなぜ非常に重要なのか?
*RCEPを通してTPPがどう生き残っているのか
*私たちは何をすればいいのか

鳩山さんが自由貿易協定の問題点、特に「自由」という問題を指摘された。もう一つ、これを貿易協定と呼ぶことの問題もある。最近のメガ自由貿易協定には、従来とは異なっていろんなものが含まれているから。その中には、将来の政府の政策を縛るものもある。たとえば、医薬品の問題、食品基準、金融政策にからむ問題、港や郵便などの公共サービス、インターネット規制、外国の投資家に対する歯止めなど。こういう問題が、自由貿易協定によって制約を受けることになる。

RCEPがTPPとどのように関係しているのか

RCEPでも同じような議題が取り上げられている。それは、新自由主義のモデルにそって作られた協定であり,市場至上主義にそった協定であるから。交渉プロセスにおいて、企業は自分の意見を表明することができる。しかし、今日おこなわれた市民からの意見表明の場において、政府が説明したのは交渉がなぜ秘密なのかだけだったと聞いた。RCEPでは、TPPに比べてもリークされた情報が少ない。
RCEPの方が交渉はより複雑になる。TPPは協定締結まで6年かかった。RCEPはすこし遅れて始まり、今回で17回目の交渉となる。RCEP交渉が複雑なのは、加盟国がTPPと異なっているから。TPPの場合、加盟国は市場に対して同じ考え方をもつ国で構成されていたが、RCEPはそうではない。RCEPに加盟国は、ASEANの10ヶ国とASEANとFTAを結んでいる6ヶ国で構成されている(ASEAN+6)。中国主導と言われるが、実際にはASEANから始まっている。ASEANの中でもいろいろな国がある。TPP加盟国がある一方で、後発開発途上国(Least developed country、略語:LDC)のカンボジア、ミャンマー,ラオスが含まれる。強固に新自由主義を主張する4つの国、つまり日本、韓国,オーストラリア、ニュージーランドはRCEPの中にTPPを持ち込もうとしている。中国は、TPPにおけるアメリカの位置にある。中国が参加しなければRCEPは成立しない。

神戸交渉会合がなぜ非常に重要なのか?

現在、TPPは頓挫しているが、トランプ政権誕生が理由ではない。参加国での抵抗,反対の運動があったため、オバマ政権がTPPを成立させることができなかった。議会の反対もあった。TPPがうまくいかなくなることがわかって、多くの国がTPPのテキストの一部をRCEPに取り込もうとしている。もっと悪い形のものもある。
その例として、医薬品の問題がある。日本や韓国から出されている要求は、TPP以上に厳しいものになっている。ニュージーランド政府は、TPPでできなかったことをRCEPで実現しようとしている。私が批判してきた問題もTPPに盛り込もうとしている。TPPにつぎこんだ政治的投資を守るために必死になっている。これが今回の神戸の交渉の背景になっている。
今回はトランプによるTPP撤退後の初めての会合になる。来月、チリでTPP加盟国の閣僚会議があり、中国や韓国も参加する。RCEP参加国がどのように考えるのかが、今後大きな意味を持つ。

TPPがRCEPの中でどのように生き延びているか

TPPとRCEPがクロスする問題をあげてみよう。
①ISDS条項
資源やインフラに投資する企業にISDS条項を使う権利が与えられる。弊害をなくすような項目は含まれていない。オフショアの調停機関に訴えることができる。調停機関において決定を下すのは、企業寄りの弁護士である。これまでの損害だけでなく、将来見込んでいた利益の損害も訴えることができ、しかも訴えられた政府は負けても控訴できない。金持ち国は気にしていない。自分たちの国の企業が勝つと思っているから。しかし、中国の企業が日本を訴えたらどうなるか考えている。
②電子商取引
外国から購入する電子商取引が増えている。エキサイティングだが、関与していない人にとってはそうではない。誰がインターネットやデータを管理しているのか。Googleは巨大な広告会社で、もっているデータは非常に価値がある。彼らがそのデータをどのように使うのか、われわれはまったく関与できない。スノーデンが暴露したように、そのデータが安全保障に使われている。
TPPやRCEPにおいて、デジタル企業は国内のデータに海外からアクセスできることを要求している。クラウドの中にある情報も含めて。クラウドはサーバーの中にあり、サーバーのほとんどはアメリカにある。アメリカはプライバシーの保護が弱く、セキュリティに弱点をもっている。データの保護,アクセスが大きな問題になる。
③医薬品アクセス
命に関わる医薬品について、薬品メーカーは長期にわたって、薬価を維持できるようにしようとしている。これは、インドなどでのジェネリック医薬品の生産、開発を阻害する。RCEPでは、TPP以上に問題。
④秘密主義

TPPでは、ペルー、ベトナムなどの途上国に対しては、目標は共通だが、猶予期間が与えられていた。しかし、RCEPにおいては、日本・オーストラリアなどが途上国に対しても同じ基準を適用するように主張している。RCEPには多様な国の集まっており、反撃が起こっているが、交渉の場では途上国に強力な圧力がかけられている。後発開発途上国の中には、会合に充分なスタッフを派遣できず、重要な会議に出席できない国もある。TPPとの違いは、インドが参加していることである。

私たちに何ができるのか

TPPが頓挫した大きな理由は、6年間にわたって参加国で大きなキャンペーンが続いたことにある。人々の声が届くようになった。RCEPではまだ運動を始めたばかり。リークされている文書も限定的だが、これまでの運動モデルから言えることは、情報を明らかにさせることが重要である。情報の交換、共有が必要。TPPはすでに拒絶された。TTIP(大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定)も。ISDS条項を嫌って、自由貿易協定から撤退し始めた国もある。流れは変わりつつある。それこそが政府が必死になる理由でもある。オルタナティブは一つではない。
RCEPは、平等・対等な競争の舞台ではないことを留意すべき。世界的な流れから疎外されてきた人々の意見が反映されなければならない。チャンスが来ている。今後のRCEP会合の過程で運動を発展させる機会がある。

この記事へのコメント