国連専門家が人権の危機を警告〜プエルトリコ債務危機

CADTMサイトに掲載されている国連人権高等弁務官事務所の独立専門家Juan Pablo Bohoslavskyの論文を紹介します(抄訳)。このサイトでは「プエルトルコ債務危機:国連専門家が人権を脇に追いやるべきでないと警告」というタイトルが付けられ、「この数年間、プエルトリコは深刻な経済的、財政的、社会的機器に直面してきた。現在、アメリカ合衆国領であるこの島は、約715億ドルの公的債務を返済することができなくなっている」というリードが付されています。原文(英語)はこちらから

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2016年6月、アメリカ連邦議会は、プエルトリコの債務危機解決のために、プエルトリコ監視・管理委員会を設置した。7名で構成されるこの委員会は、プエルトリコの公的債務の再編を援助するために設置されただけでなく、将来の金融政策を決定するプエルトリコ財政プラン承認の権限をも与えられていた。
金融安定化の保証、公的債務のコントロール、財政赤字の削減が、重要な任務である。財政管理、金融の透明性、税の徴収がプエルトリコで改竄される必要があるということも広く合意されている。しかしながら、これらの目標を達成することは人権を犠牲にして行われるべきではない。

私はこの点について、2016年5月に、アメリカ政府に調査を要請した。9月に食料、健康、住居問題担当の国連専門家とともに、プエルトリコの状況について書簡を送り、10月19日にアメリカ政府から短い返事を受け取った。これに感謝しつつ、ワシントンとサンホアンの当局、およびプエルトリコ監視・管理委員会から実質的な反応が寄せられることを期待している。私がその書簡で指摘した問題は依然として気がかりな問題であり、財政プランが近々承認される予定なので、この問題について公にすることに決めた。

プエルトリコは有効な債務削減を必要としている

プエルトリコの債務再編という目的を果たすには、公的債務を財政的に、かつ社会的に持続可能なレベルまで削減しなければならない。プエルトリコ監視・管理委員会は、債権者の権利を絶対的に優先し、極端な緊縮政策を強制することで、経済的・社会的・文化的権利が損なわれいようにしなければならない。
プエルトルコ人を、自らに責任のない過去の貸借りの人質にしてはならない。プエルトリコ地方債の多くを保有するヘッジファンドを含めて、債権者は応分に損失を負担する必要がある。

プエルトリコはこれ以上の緊縮を負担することはできない

増税、賃金凍結、団体交渉合意の一時停止、27%以上の政府雇用の削減など、2008年以来の緊縮政策によって、経済後退の深刻化、失業率の増大、移民の増加、税収減が起こり、経済的・財政的収縮という負のスパイラルを招いた。職を求めてアメリカ本土に渡ったのは、プエルトルコ人の10%にのぼっている。過去10年で貧富の差は拡大し、半数近くの人々が公的な貧困ライン以下で暮らしている。ひとり親家庭の705、子どもたちの57%が貧困の影響を受けている。
策定される財政プランは、食料、健康、住居の権利を保障し、社会保障をこれ以上損なわないものでなければならない。いかなる改革も、質のいい公共サービスが容易に、手頃な価格で入手できることをさらに難しくするのを防がなければならない。債務再編は、プエルトルコに成長志向の改革を行うための息継ぎの空間を作り出すのに必要である。過度な緊縮政策は、経済成長にとっても自滅的である。

健康の権利

プエルトリコでは、財政支出の削減と医者の流出によって、医療制度の悪化が進んでいる。加えて、ジカ熱の流行が進行しているのに、支出削減によって効果的な対策が取れない状況にある。平均すると、1日に1人の医師がプエルトルコからアメリカ本土に流出しており、プエルトリコ人は適切な治療を受けられなくなるリスクを抱えるとともに、病院の病棟も閉鎖されている。低所得者のための公的保線制度は、今のところ医療費適正負担法のもとにある基金からの支出で維持されているが、その基金は2017年度末までに底をつく見込みである。
連邦政府からの公的保険への支出は、アメリカ本土に比べて少なく、その分を補填するためにプエルトルコ自治政府が発行した債券は、プエルトルコの公的債務の3分の1を占めている。したがって、連邦政府による公的保険制度へのより公平な財政支出、および子どものいる家庭への免税措置の拡大が必要である。

障がいを持つ人々の状況

過去40年にわたって、連邦議会は、他の50州の障がい者に対して実施されている追加所得保障制度(生活保護制度)に基づく財政支出を、プエルトリコの人々に与えるのを拒否してきた。プエルトルコの障がい者は、より限定されたAABDプログラムからの支援に頼らざるを得ない。アメリカ本土では月540ドル支給されるのに、プエルトルコではわずか74ドルの生活費が支給されるだけである。これは、国際法による政府の責任を放棄する差別的政策である。

食料と適切な住居の権利

公式の統計によれば、プエルトルコの37.7%の家庭が食品購入のためのフードスタンプ死球を受けている。プエルトルコの学校は、子どもたちに一食ぶんの食事を提供するために膨大な予算を使っている。しかし、すでに150の学校が閉鎖され、今後5年間でほぼプエルトルコの公立学校の半数にあたる600近くが閉鎖される見込みである。
家賃を払えず立ち退き命令を受けたり、電気や水道を止められた住民の数が増えている。立ち退き命令への対応を含む貧困層に法的援助を行う部局では、支出削減のため職員288人のうち56人がレイオフされた。

社会保障と公正・公平な労働条件の権利

監視・管理委員会が提案している労働水準の切り下げを私は憂慮している。その中には、退職手当、フレックス勤務、従業員のつなぎとめ、休日、年金に関係する規制が含まれている。そのような改革は、多くの例が示すように、雇用の増大や経済成長には結びつかない。逆に、低賃金で不安定な労働者を増やすだけである。
プエルトリコ最大の年金制度はあと2年で破綻するミット氏である。他の3つの年金制度も資金が430億ドル不足している。

公的な事柄への参加の権利

改革によって影響を受ける人々が相談を受けるだけでなく、将来を決める重要な経済的改革について、市民自らが民主的プロセスを通じて決定できることが重要である。公的な事柄への参加の権利は人権の核心的な部分だからである。

緊縮と人権

経済的・社会的・文化的権利の教授に悪影響を与える緊縮政策は、もし避けられなかったとしても、例外的な条件のもとでのみ許容されるし、差別のない方法で実施されなければならない。財政再建策を決める際には、生活できるだけの最低賃金制を導入することを考えなければならない。政府は、材さ検索や構造改革政策を実行する前に、人権についての独立した調査を行うべきである。加えて、債務の監査が完了していることが必要である。2015年7月にプエルトルコ公的債務監査委員会が設置され、現在作業を進めている。
アメリカの多くの人々がプエルトリコの状況について関心を持っている。プエルトリコにおける経済的・社会的・文化的権利の悪化については、すでに公的なヒアリングが行われた。私が要請したアメリカ連邦政府の調査が早急に行われることを望む。

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