「タワー火災は人災」〜背景に規制緩和と緊縮政策

14日に発生したロンドンのグレンフェル・タワー火災は、犠牲者が100人近くになる可能性も報じられています。
火災が急速にタワー全体に広がった原因として、昨年の改装の際に外壁に取り付けられた断熱材が、ポリエステルとアルミを材料とする可燃性のものだったという指摘も出ています。ロイターが配信した記事の中では、住民が「なぜ外観をきれいにしたのかを考えると、いらだたしい。反対側の高級住宅の住民にとってこのタワーが見苦しいからだ」と怒りをぶちまけていました。つまり、この高層アパートを管理する保守党主導のケンジントン・アンド・チェルシー王室特別区が、富裕層の要望に沿って(住民の度重なる要求に対してではなく)、改装工事を実施したというわけです。
また、火災直後のメイ首相の対応にも批判が集中しています。「被災者に会わず帰った」「労働党コービン党首が被災者や住民、ボランティアに直接話を聞いたのを得点稼ぎと批判したのに、女王が慰問した後で慌てて住民に会いに行き、ブーイングを浴びた」などの報道が見られます。

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ここでは、「ロンドンのグレンフェル・タワー火災は人災だ」と指摘するイギリスのガーディアン紙の論評を紹介します(要旨)。「政府が金を節約することより人命を大事にしていれば、グレンフェル・タワーのような悲劇は起きていただろうか?」と題するToby Helmさんの論評です。英技原文はこちらから。

「ここ数年間、火災安全・救助議員連盟は、規制緩和と緊縮の必要性を優先し、専門家の目から見ると、安全問題を関心のある問題のリストから格下げした保守党政府に対して、声を届けようとロビー活動を行なってきた。」
「何年もの間、火災専門家は、建築基準を二つの点で改正し、強化しなければならないと訴え続けてきた。つまり、使用される建材、とりわけ外壁用建材はもっと耐火性のあるものを使うよう義務付けること、多くの人々が長時間にわたって居住し、働き、遊ぶ建物の新築の際にはスプリンクラーの設置を義務付けることである。」
「キング氏によれば、問題の多くは1986年に建築基準が緩和され、ロンドン市街地で耐火性のほとんどない建材を外壁に使用できるようにしたことにさかのぼる。」
「彼の主張によれば、この改正によって、2009年に発生した南ロンドン・カンバーウエルのラカナル・ハウスの火災が6人の死者を出す惨事となってしまったという。」
「火災は外壁をつたって広がり、各階に入り込み、6人を殺した。・・・1985年以前なら法律違反の建材が使われていたからだ。」
「ラカナル・ハウスの惨事についての調査や検視官報告にもとづいて、消防部門は政府に行動すべき多くの要求を出した。しかし、政府はことごとくその要求をうやむやにし、実施を遅らせてきた。」
「昨年、火災専門家は、政府が規制緩和(規制強化ではなく)をおこない、学校の建設にあたってスプリンクラーを設置しなくてもいいようにしたことに怒った。素早く安価に新しい学校を建設することが優先されているように見えた。」
「結局のところ、グレンフェル・タワー火災は人災だ。しかし、メイ首相と保守党にとって、それは政治的な惨事になりつつある。」

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