CADTM南アジアワークショップ報告②〜南アジア:新たな債権者と債務奴隷の新たな形態(1)

4月6〜8日にスリランカのコロンビで開催されたCADTM(不当な債務長帳消し委員会)南アジアワークショップについては、本ブログでも取り上げてきましたが、ワークショップでの議論をまとめた論評を何回かに分けて掲載します。筆者は、GADTM国際書記局のナサン・レグランドさんです。
今回は、スリランカにおける政治危機と債務問題を取り上げます。

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南アジア:新たな債権者と債務奴隷の新たな形態
2018.4.17
ナサン・レグランド

CADTM第7回南アジア地域ワークショップは、スリランカからだけではなく、インド・パキスタン・バングラデシュ・ネパール・日本・ベルギー(CADTM書記局メンバー)からの参加者を得て、2018年4月6日から8日にかけて、スリランカのコロンボで成功裏に開催された。3日間のプログラムのために結集した約40名の参加者のほとんどは、社会運動(農民運動、フェミニズム運動、労働組合運動など)を代表していた。このワークショップはCADTMだけのものではなかった。スリランカ法律・社会トラスト(LST)や土地・農業改革運動(MONLAR)の積極的参加と財政的支援がなければ、開催することは不可能だっただろう。参加者の多くがスリランカ出身であり、シンハリとタミールという二つの主要な民族グループを代表していた。会議全体は、同時通訳の献身的なチームのおかげで、三つの言語(シンハラ語、タミール語、英語)で運営することができた。

政治危機の中にあるスリランカ

会議は2018年2月以降スリランカで展開されてきた政治危機の最中で開催された。現在政権を握っているスリランカ自由党(SLFP)・統一国民党(UNP)のリベラル連合が地方選挙で大敗を喫したのだ。右翼的シンハリ民族主義者であるスリランカ人民戦線(SLPP)が、地方議会340のうち249で多数を獲得することができたため、SLPPの強硬派マヒンダ・ラージャパクサ前大統領は、国会では反対派にとどまっているものの、全国政治の表舞台に復活することができた。

マヒンダ・ラージャパクサは、10年間権力の座にあった後、2015年の大統領選挙で敗北した。彼の政権が、タミール・イーラム解放のトラ(LTTE)に主導された反乱を最終的に粉砕(その過程で戦争犯罪を引き起こした)した後、そして縁故政治や汚職を背景として、次第に強権的転換を行ったためだった。その時以来、以前の同盟者マイトリパーラ・シリセーナが大統領職を務めてきた。彼は、選挙の際に民主的改革の推進と汚職追放を公約したが、その両方とも実行しなかった。むしろ彼は、主に官民連携を発展させるという新自由主義的政策を実行した。これはSLFP(見かけ上は社会民主主義)とUNP(攻撃的な新自由主義者)の間では共通の基盤となっていた。そこでは、双方の陣営共にそれぞれのイデオロギーを守ったのだと主張することができるのだ。

SLFPとUNPが彼らの失敗をお互いの責任にしようとしている中、マイトリパーラ・シリセーナ大統領は弱体化した与党連合になんとかして対処しなければならない。一方で、仏教原理主義者の周りに組織された極右グループは、SLPPの勝利によって、ムスリム社会を標的とした攻撃を組織するのに十分な激励を受けたと感じた。

スリランカの公的債務政策

ワークショップはスリランカの公的債務政策の概要についてのプレゼンで始まった。スリランカの公的債務は今や全部でGDPの81.6%に達しており、約7兆ルピー(470億ドル)にのぼっていて、歳入のほとんどを債務返済に充てざるを得なくなっている。海外からの公的債務はGDPの36%に達し、その3分の2近くは多国間ないしは二国間債務である。海外からの民間債務(ほとんどが民間企業によって借りられている)と合わせると、GDPの57%に達する。このことはスリランカの比較的低い収入と通貨の減価を考慮すると、返済能力に関する関心を呼び起こすものとなっている。

多国間債権者に関しては、スリランカはIMF、世界銀行、アジア開発銀行のメンバーであり、IMFが求める構造改革の推進と引き換えに融資交渉することを受け入れている。IMFの要求に従って、スリランカは輸出主導型経済モデルを発展させてきたし、国有企業の民営化を押し付けられている。官民連携の推進は、民営化プロセスの一部である。こうした政策にもかかわらず、スリランカは貿易収支や国際収支で大きな赤字を抱えており、そのため債務の罠にはまっている。スリランカは経済を発展させ、高レベルの公的債務を処理するのに十分な投資を呼び込むことができてこなかった。これまでのところ、経済を浮揚させる主要な要因は、海外で働くスリランカ国民からの送金であり、それは毎年70億ドルを超えている。

IMFとスリランカは2009年、最初の融資合意に調印した。マヒンダ・ラージャパクサ政権は、最初はIMFからの融資に消極的だった。というのは、それにつけられた条件のためだった。彼はこうした条件に反対だったのではなく、その条件を実行すると国有セクターが縮小してしまい、腐敗した政府が支持者に対して給付したり支援したりする能力が衰えるが故に反対したのだった。結局のところ、マヒンダ・ラージャパクサ政権は融資を受け入れた。2009年にタミールのトラの抵抗を最終的に粉砕するための軍事費のための資金が必要だったからである。IMFの融資が直接軍事費に使われた訳ではなかったかもしれないが、それは少なくともラージャパクサ政権が他の歳入源を軍事費に回すことを可能にしたのだった。そのような債務政策は前政権によって推進されただけでなく、2016年にはマヒンダ・ラージャパクサ政権も15億ドル近くにのぼる別の融資契約をIMFとの間で調印した。

歴史的には、スリランカの融資のほとんどは世界銀行やイギリス・オランダからのものだった。最近10年間では。伝統的な債権者から新たな債権者への移行が見られる。スリランカは金融市場や企業向け銀行から資金を借り始めた。金利が高く、返済期間も短いので、リスクを生むことになる。マヒンダ・ラージャパクサ政権のもとでは、中国・インド・ロシアがスリランカの二国間債権者となった。これらの新興国は、IMF基準に従った北側諸国の力で押し付けられているマクロ経済的調整条件を強制しないだけでなく、イギリスやオランダほどにはスリランカの人権侵害に対する説明責任(そのような要求がどれだけ純粋に美学的なものであったとしても)を求めてはこなかった。10年以内に、中国は二国間債権者のトップになった。こうした依存関係によって、中国は自国の戦略的利益を推し進めるためにスリランカ経済における足がかりを得ることができる。

新たな融資の大半は、以前の融資返済のために使われている。投資に関しては、政府は公的債務をほとんどインフラ整備のために使っている。それらは高級官僚がコミッション支払いを通じて、大きな見返りを得ることができるからである。学校や病院ではそうはいかない。スリランカの公的債務返済とIMFによって押し付けられた政策の実行は、スリランカ経済と国民に深刻な打撃を与えている。輸入代替モデルを発展させ、経済を現代化するために(国民の80%は農村に住むが、農業はGDPの8%を占めるだけ)、国が生産部門に投資することができないからである。さらに国が公共教育や医療部門に適切に資金を使うこともできなくしている。このようにこれらの部門はますますサービス利用者からの民間資金に依存するようになっている。

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