CADTM南アジアワークショップ報告③〜南アジア:新たな債権者と債務奴隷の新たな形態(2)

前回に続いて、「南アジア:新たな債権者と債務奴隷の新たな形態」の(2)です。今回は、「南アジアにおける中国の融資と投資」と「(南アジアにおける)企業債務と銀行部門」について述べられた部分です。

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南アジアにおける中国の融資と投資

ワークショップの参加者は、南アジア(パキスタン、スリランカ、バングラデシュ、ネパール)における中国の攻撃的な融資政策と対外直接投資について議論した(インドにおいては、中国が主な競争相手であり、かつては敵だったので、警戒されていたため、そのような略奪的政策からの影響はより少ない)。IMF・世界銀行のような国際金融機関の融資政策とは正反対に、中国の融資は構造調整政策という条件をつけていない。これらの投資は、優先的にエネルギー部門や天然資源部門をターゲットにしており、労働権侵害や環境に対する否定的影響のゆえにしばしば批判されている。中国企業は、バラックのような労働環境の中で中国人労働力を使うので、当該国にあまり利益をもたらさない。さらに、融資はほとんどの場合、天然資源のような国家資源に裏付けられているので、もし債務国がデフォルト(債務不履行)を宣言すれば、中国は債務国の貴重な資源をさらに多く獲得できるだろう。

中国の最近の成長戦略は、「一帯一路」の幅広い枠組みの中で推進されているので、南アジアにとどまらなくなっている。香港に拠点を置いて活動する社会運動家ロビン・リーは、「一帯一路」について以下のように述べている。「『一帯一路』は、中央アジアと中東を経由して中国とヨーロッパとを結ぶシルクロード経済ベルト(SREB)とアフリカ・太平洋にまで至る21世紀海のシルクロード(MSR)とで構成されている。その目的は、貿易とインフラのネットワークを作ることであり、国際的輸送ルートや中核都市・港湾を利用することである。」ロビンは続ける。「建設・投資の主要な分野は、港湾・発電所・石油及びガスのパイプライン・鉄道・道路・橋・インターネット・農業である。」中国は世界規模で、重要な貿易ルートを作り、支配するとともにできるだけ多くの国の国内市場に足がかりを得るという目標に積極的に資本輸出している。これはそのプロジェクトの社会的・環境的影響についての懸念やこれが発展途上国に対して作り出す支配関係についての懸念を呼び起こしている。

南アジア地域内においては、パキスタンが今まで「一帯一路」の枠組みがもっとも展開されてきた国である。というのは、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)が、「一帯一路」の枠組みの一部ではあるが、「一帯一路」に先行していたからである。中国・パキスタン経済回廊は、「一帯一路」に含まれる六つの経済回廊(その全てはアジアとヨーロッパにある)の一つであり、「中国西部のカシュガルからパキスタンのグワダール港まで3,000キロを貫いている。回廊には、道路・鉄道・発電所・光ファイバーネットワークを含むインフラ・プロジェクトが建設中か、建設予定である。それらは主に中国資本や中国ファンドによって資金供給されている。」グワダールはアラビア湾やペルシャ湾に直接アクセスできる水深の深い港であり、こうしたアクセスや港湾管理は、アラビア半島やアフリカに容易にアクセスするための地政学的資源となる。グワダール港は現在、中国国有企業によって管理されている。中国・パキスタン経済回廊は、中国からの対外債務によってパキスタンに重荷を背負わせている。そのため、今日、パキスタンの公的債務は大きな懸念を呼んでいる。というのは、最近、パキスタンはさまざまな国際金融機関から融資を受けるのに、高速道路や空港といった国家財産を抵当に入れなければならなかったからである。中国・パキスタン経済回廊プロジェクトで活動する中国企業は、パキスタン企業と提携しないし、労働力を中国から持ってくる。同時に、中国企業は税免除や市場調達ルール違反から利益を得ている。そして、中国企業が契約を獲得するために、中国に対するパキスタンの負債を用いて、中国はパキスタンを脅迫しているのだ。

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南アジアにおける中国の略奪政策の悪名高い例の一つが、スリランカ南部の町であるハンバンソタにおけるスリランカの施設に関するものだ。中国国有企業は、水深のある港をこの町に建設し、近くの空港を改装した。今のところ両方ともあまり使われていないので、それらの施設はスリランカ当局にとって運営する上で大きな損失を生み出している。建設に際して借り入れた債務の返済をしなければならなかったからだ。2017年、中国とスリランカは80億ドルのデットエクイティスワップ(訳注:「債務株式化」とも言い、債務の一部を株式に変換して出資すること)に調印した。これは、埠頭の70%の使用権を中国国有企業に99年間リースするというものだ!2016年に発表されたとき、この債務変換は、中国が島の主権を侵害するものとして、スリランカで抗議の波が爆発した。しかし、抗議行動は、港湾管理権での中国の持ち分を当初計画されていた80%から引き下げることに成功しただけだった。「一帯一路」戦略において可能な限り活用するために、中国が港を発展させることは疑いない。そして、それがスリランカにはほとんど利益をもたららさないことも。

企業債務と銀行部門

参加者が私的債務の問題を議論する前に、企業債務の国際金融情勢についての(それほど積極的ではない)見通し〜そして実体経済に与えるリスク〜が議論された。2010年以降、中央銀行によって実行されてきた低金利政策によって、大企業は社債発行を通じて金融市場からの借り入れを大きく増大させてきた。アメリカ合衆国では、非金融企業の負債は7兆8,000億ドルにまで増大した(これはインドの公的債務全体の約7倍に相当する)!こうした巨額の債務は生産活動に投資されないため、実際の価値を何ら作り出さない。大企業はこの借入金を自社株購入に使っている。こうして、大企業は収入に課税されることなく、株主に利益をもたらすことができる。これはまた、自らの会社の株の時価総額を上げることを助ける。

そのように株式市場における企業の価値は、実体経済における企業の状況とは何の関係もなく、人為的に増大する。巨大な株式市場バブルがここ何年かにわたって発展している。さらに、こうした大企業はまた、借入金を他の部門によって発行された債券(他の会社の社債、資産担保証券やモーゲージ証券のようなデリバティブ商品、自治体債のような公債)を大規模に購入するために使っている。債券市場で活動するアメリカの非金融企業上位30社は合計で、社債・CP証券(訳注:企業が短期で資金調達するための無担保の約束手形のこと)を4,230億ドル、公債を3,690億ドル、資産担保証券やモーゲージ証券のような仕組み商品を400億ドルも保有している。大企業はハイリターンを追求して、基盤の弱い企業の債券に投資する傾向がある。もしこうした比較的小規模な会社が債務不履行に陥れば、容易に大企業のいくつかが債務不履行となる連鎖反応を引き起こすかもしれない。この社債市場バブルは、もし中央銀行が公定歩合を引き上げる決定を行えば、ただちに破裂してしまうだろう。

インドの場合は大企業の債務と結びついたリスクを明らかにした。最近のパンジャブ・ナショナル銀行をめぐる詐欺は、ダイヤモンドの大物、ニラブ・モディが銀行幹部と結託して、インド第二の銀行から17.7億ドルをだまし取ることができた。このことは政府の規制官庁によって行使される管理が機能していなかったことを明らかにした。この詐欺は単発的なものではなかった。インドの銀行における不良債権(契約不履行資産としても知られている)の状況は大企業の悪業を暴露している。不良債権はいまや1,456億ドルに達し、それは全債務の12.6%に相当する。こうした不良債権の多くは、巨大な複合企業に貸し付けたものである。インドでは、公的銀行部門が銀行産業を支配していて、これらの不良債権にもっとも関係している。資本家のトップと中央政府の右翼指導者は、仮定された公的銀行の非効率性を非難し、公的銀行の民営化を提唱するために、この機会を利用している。本当のところ、これらの不良債権は、かなりの程度インドの縁故資本主義のためである。インドでは、重要なローンは、政治家および権力者によって支持される複合企業に対して継続的にばらまかれてきた。大きな債務を抱える企業の中には喜んで債務不履行しようとする企業があるのは、それを罰なく乗り切ることができるのを知っており、これらの意図的な債務不履行者を支援する政府が、公的資金で銀行を資本変更することで、私的な損失を社会化することを知っているからである。進むべき道は、これらの公的銀行の民営化ではなく、民間のように経営される銀行から、公共サービスの提供に責任を追う真に公的な銀行への転換である。公的当局の支配・規制力を増やし、尊重すべきである。さらに、銀行部門の社会化にむけて闘うべきである。そして市民や公的当局、銀行従業員が銀行の政策を共同で決定すべきである。

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