スリランカのタミルの人々の民族的権利〜スリランカ人権活動家のジュードさんによる報告(10/24)

10月24日、スリランカの人権活動家ジュード・ラル・フェルナンドさんとの交流会・講演会が開かれました。

ジュードさんが交流会で話された「スリランカのタミルの人々の民族的権利」について、用紙を掲載します。なお、文責はATTAC関西にあります。

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今朝まで、韓国で開かれたセミナーに参加してきた。3日間缶詰めで、朝早くから夜遅くまで討論してきた。今朝も4時まで、済州の平和活動家とタミル人の活動家と討論し、ほとんど寝ていないが、こうした集まりに参加できて喜んでいる。われわれがさまざまな問題に取り組むとき、自分たちはは勝利できるだろうかということが常に問題となるが、今日はいいニュースから始めることができる。

一つ目は、スイスに亡命しているタミルの活動家6人が、スイスのタミル人からカンパを集めて、スリランカの人々の生活支援に送金していたことに対して、スイス官憲が「テロリストへの送金」として逮捕した件で、裁判所が「6人はテロリストとは認められない」と判決したことだ。京都の皆さんの連帯行動に感謝している。各国からも署名が集まった。スイス政府が、実際にはスリランカ政府がタミル人を虐殺したにもかかわらず、タミル活動家を「テロリスト」だとして投獄したのは、スリランカ政府の行為を免罪したものであり、その意味でこの判決は重要である。

タミルの問題というのは、韓国の済州、沖縄で起こっていることと同じだ。沖縄では、日本政府が罰せられるのではなく、それに抵抗する人々が罰せられている。済州でも、もっとも素晴らしい場所が、米軍の海軍基地にされている。それに抵抗しているカソリックの活動家は三回も逮捕されている。ここでもタミルと同じことが起こっている。

もう一つは、ジュネーブの国連人権委員会で証言するように誘った南インド在住のタミル人活動家が、バンガロールでインド警察に逮捕されたのだが、われわれのとりくみの結果、起訴はされたのだが、その後釈放されたことだ。イギリスに本社をおく化学企業がタミールナドゥに工場を建設し、水を汚染している。それに対して抵抗する農民をインド警察が弾圧し、34人を殺した。彼の容疑は、水の汚染と農民殺戮に抗議の声をあげたこと、インド国内においてスリランカで起こったタミル人虐殺を非難したことの二つだった。われわれは、ドイツ政府とアイルランド政府に働きかけた結果、インド駐在の両国大使館がインド政府に事実調査を要請した。

その背景には、EUでは、環境破壊について規制があるが、イギリスの企業がそれにも反した形で、インドにおいて環境を破壊していることがある。アイルランドもドイツも、EUを守ろうとしているし、EUの規制を守ろうとしている。これがわれわれの働きかけが成功した理由だ。その結果、逮捕された活動家は起訴されたが、身柄は釈放された。

さらにグローバル・ジャスティスにとって、いいニュースが二つある。一つは、東京の政府がかつてない巨額の資金を投入して沖縄知事選に介入したが、成功しなかったこと。もう一つは、韓国のキャンドル運動で成立した文大統領が、済州を訪問して、今までに逮捕された人々をすべて釈放すると言う約束をしたこと。文大統領が来た時、済州の平和活動家は、米軍基地を推進している大統領は信用できないとして会うことを拒否した。したがって、そうした活動家がいない場にもかかわらず、そうした約束をしたのだ。

次に、タミルの現在の状況について話したい。われわれは、ダブリン(2010)とブレーメン(2013)で国際民衆法廷を開き、政府軍のジェノサイドについての詳細な実態を明らかにした。アメリカ、イギリス、インドの政府は、スリランカ政府を支援する姿勢を強めているし、これらの国はジェノサイドに加担した国である。

2010年の民衆法廷では、戦争犯罪にアメリカとイギリスが加担したという判決を出し、サイトに掲載すると、その日のうちに98,000件のアクセスがあった。民衆法廷の判決に注目が集まったため、アメリカとイギリスは、スリランカ政府に調査委員会を作るように圧力をかけた。スリランカ大統領が自分で委員会を選んだ。その委員会の報告書では、政府軍による殺戮はなかった、すべてタミルのテロリストが行なったという結論を出した。和平交渉は誤りだったという結論も出した。

「タミルイーラム解放のトラ」という武装組織があったのは事実だが、彼らをテロリストと呼ぶのは間違いである。彼らは、軍事的成果を政治的成果へと転化しようとした。それを一番良く知るのは日本の明石氏だった。彼は最も精力的にタミルの指導者たちと会談を重ねた。和日本で交渉がおこなわれている当時はイラク戦争の時期で、タミル指導者たちは「インド洋を平和の海にするのだ」と言っていた。もし、この和平交渉が成功していたら、安倍政権とインドのモディ政権が軍事同盟を結ぼうという情勢はなかった。アメリカが中国と対抗するために両者を結びつけた。その目的のためには、タミルの抵抗運動をたたきつぶすしかなかった。それがアメリカがやってきたことだ。和平プロセスは、アメリカやスリランカ政府にとっては悪いことだったかもしれないが、タミル人にとってもシンハリ人にとっても良いことだったはず。

民衆法廷がジェノサイドの事実を明らかにしたが、スリランカ政府はすべて「タミルイーラム解放のトラ」がやったと言っている。アメリカ政府は、スリランカ政府の委員会のレポートを自分たちの主張として国連に提出した。国連が独自におこなった調査では、両方の側に戦争犯罪行為があったと報告したが、アメリカはスリランカ政府の委員会のレポートをもとに、国連人権委員会で3回の決議を採択させた。その内容は、スリランカが主権国家であることを認める(つまりタミル人が自らの居住地域をホームランドとすることを認めないことを意味する)、そして、人権侵害はあったが個人的なものであり、スリランカ政府が調査すべきである、ということだった。これは、ナチスにユダヤ人虐殺の調査権限を与えるようなものだ。これによって、民衆法廷への関心が弱まり、ジュネーブでの決議に人々の関心が集まるようになった。タミル人は決議を求めたわけではなく、政府による弾圧からの自由を求めただけだが、いまやタミル人の土地が政府にものになっている。

いまタミル人居住地域では、軍事化、土地の強奪、宗派的暴力、女性への暴力、シンハラの仏像健造がどんどん進んでいる。政府は、民衆を自分たちのシステムに取り込もうとしている。それは、政府にとって容易なことではないので、国際的な力、つまり日本・中国・インド・EUの力を借りて行おうとしている。

中国による投資が増大すればするほど、米英の支援も強まる。こういう動きに対する最大の抵抗は、タミルの人々による土地への記憶である。「タミルイーラム解放のトラ」は、武装組織としてはもはや存在していない。タミルの人々の政治的動きも潰すことはできるかもしれない。しかし、人々の土地への愛着、歴史の記憶を消すことはできない。内戦後の最初の数年間、タミルの人々は国連などが何かしてくれると期待していたが、今は誰も信じていない。タミル人の抵抗運動が続いている。沖縄ほどは強くなっていないが。

軍事化について言うと、スリランカ軍のうち、7割以上の部隊がタミル人居住地域に展開している。ジャフナ半島では、住民40人に1人の兵士が配置されている。世界で最も軍隊の密度が高いと言われるカシミールでは、民間人16人に1人の兵士が展開しているが、虐殺のあったムリバイカル村を含む地域では、住民2人に兵士1人、つまり12万人の住民に対して6万人の兵士が配置されているのだ。スリランカの軍事予算の60%は情報戦に使われている。すべての村に監視網が張り巡らされている。「解放のトラ」の元メンバーもリクルートされている。こうした状況にも関わらず、抵抗がつづいている。

タミルの居住地域に軍隊が常駐して、その家族も一緒に住んでいるということは、パレスチナと同様に、シンハリ人の入植地ができていくということになる。これにより、タミル人が土地から切り離されていく。

スリランカの海岸線の3分の2がタミル人居住地域にある。タミル人の経済は漁業と農業からなっている。内戦の中で、海軍は漁業に対して、500m先までしか船を出せないといった制限を設けた。内戦中は、それでも漁に出て、魚を捕ってくることは可能だった。ところが、内戦後、海岸線の大半が軍によって買い上げられた。さらに、シンハリ人の漁民に漁業権を与えることまでした。タミル人漁民の漁業は伝統的なやり方をしていたが、シンハリ人漁民は近代的漁業をやっている。南部では細か過ぎる網の使用は禁止されているのに、タミル人居住地域では許可されている。したがって、タミル人漁民は競争できない。オーストラリアへ移住している人のうち、一番多いのはスリランカのタミル人であり、政府がその状況を作っている。

軍は、タミル人居住地域に広大な農場を持っている。タミル人農民は小規模農業をやっているが、軍は、近代的農業によって安い価格で農産物を作り、市場で販売するので、タミル人農民は競争できない。そのため、農業をやめる人が多くなり、自殺する人も出ている。これも民族浄化の一例だ。

こうした状況の中で、国際社会で聞こえてくるのは「和解」という言葉である。国連人権委員会は何の力も持たない。スリランカにいるNGOも、こうした状況を国際社会に訴えようとしない。日本政府は、タミル人居住地域に、古代のシンハリ仏教遺跡を復活させるプロジェクトに出資している。日本からの観光客向けだろう。これは、シンハリ人が歴史的にも優れていたというキャンペーンの一部であり、シンハリ人の単一国家をめざすとき、タミル人はインドからの侵略者であるという意識を作り出すなど、こういう形で意識を変えていく必要がある。

軍事化をこのまま許せば、再びジェノサイドが起きる可能性がある。

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