【COP24】IPCC特別報告書の内容と意義〜COP24報告会から

IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)特別報告書についての会員からの投稿です。

1月19日、CASA(地球環境市民会議)などが主催したCOP24報告会に参加しました。報告は「平均気温が1.5℃上昇したら世界はどうなる?〜IPCC1.5℃特別報告書から」(小西雅子さん、WWFジャパン)、「COP24の結果と今後の課題〜脱炭素社会に向けた世界の動き」(高村ゆかりさん、東京大学教授)、「日本政府はタラノア対話にどう対応したのか」(小野洋さん、環境省大臣官房審議官)の3つ。

IPCC1.5℃特別報告書についての小西さんのレポートは、この報告書の内容を簡潔に要約し、その意義を明らかにしたもので、大変示唆に富んだものでした。以下、その報告を要約したいと思います。

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このままで推移すると、21世紀末には世界平均地上気温が4℃程度上昇すると考えられている。2050年には世界人口が20億人以上増え、97億人になると予想される。したがって、何もしなければエネルギー消費もその分増加する。21世紀末には、東京の平均気温は4.3℃上昇すると考えられ、現在の屋久島(年平均気温19.4℃)に近い気温になる。

アジアにおける温暖化の主な影響には、洪水被害、熱中症などの死亡リスク、干ばつによる水・食料不足が挙げられる。2℃未満に抑えた場合と4℃上昇した場合では大きな差がある。適応によるリスク軽減は可能だ。パリ協定の国別削減目標をを足し合わせても、気温上昇は2℃を超え、100年後には3℃の上昇が予測される。

COP21で、すでに海水面上昇による国土消失や台風による土壌浸食など、温暖化の影響に脆弱な国々が1.5℃目標を主張し、IPCCによる報告書を要求した。これは政治の側から科学の側へと要求が出された最初だった。1.5℃特別報告書(SR1.5)には、その目的が「気候変動の脅威に対してグローバルな対応力の強化と、持続可能な開発のため、そして貧困を撲滅する努力のため」と明記されている。

特別報告書の内容を要約すると、
・人間活動によって、産業革命前に比べて、すでに約1℃上昇
・現在のペースで排出量が増加し続けると、2030〜2052年の間に、1.5℃に達する見込み
・1.5℃の上昇で、現在よりもかなりの悪影響が予測される
・さらに、1.5℃と2℃上昇の場合には、影響に相当程度の違いがあり、1.5℃の方が安全であることが明らかになった
・1.5℃に抑えるには、世界の排出量を、2030年に45%減(2010年比)、2050年には実質ゼロにする必要がある(2℃のためには2030年に20%減、2075年に実質ゼロ)
・1.5℃に抑えることは可能だが、前例のないスケールで社会システムの移行が必要(2050年に再エネ70〜85%、石炭ゼロなど)
・パリ協定に提出されている現状の各国の目標では、3℃の上昇が見込まれる

1.5℃と2℃の場合の影響を比較すると
・熱波に見舞われる世界人口(少なくとも5年に1回)1.5℃〜約14%、2℃〜約37%(約17億人増加)
・洪水リスクにさらされる世界人口(1976〜2005年比)1.5℃〜2倍、2℃〜2.7倍(仮に4℃になれば6.7倍)

1.5℃に抑える排出経路は、2030年までに約45%(2010年比)減少、2050年頃までに実質ゼロ。報告書では代表的な4パターンが挙げられ、そのうちパターン1に見られるように、早く広範囲に排出を減らせば、CDRなど未知数の技術に頼らずに1.5℃達成可能。排出削減が遅れれば遅れるほど、CDR を使わざるを得なくなる。シナリオで使われているCDRは、BECCS(バイオマスエネルギー+炭素貯留回収)。CDRの中にはもっと危険な技術も含まれているが、今回のシナリオでは使われていない。

1.5℃に抑えることは可能だが、前例のないスケールで社会システムの移行が必要。1.5℃排出経路においては、エネルギー、土地利用、都市、インフラ(交通と建物を含む)、産業システムにおける、急速かつ広範囲に及ぶ移行が必要。2050年のエネルギー(電力)は、再生可能エネルギーで70〜85%供給。ほとんどの排出経路において、原発、CCS付き火力発電の増加。全ての排出経路において、石炭の利用は急激に減少し、2050年にはほぼゼロ。

パリ協定に提出されている2030年に向けた各国の目標では、約3℃の上昇が見込まれる。2030年以降に、非常に大規模な削減をはかったとしても、1.5℃に抑制することはできない。将来的に、大規模なCDR(大気中からCO2を除去すること)に頼ることを避けるためには、2030年より十分前に、世界の排出量が減少に向かう必要がある。2℃よりも1.5℃に気温上昇を抑えた方が、SDGsの貧困撲滅、不公平の是正などにもより貢献する。1.5℃達成の排出削減策は、SDGsの目標全般にわたって、複数の相乗効果(シナジー)と負の影響(トレードオフ)がある。相乗効果は負の影響に勝る。負の影響には、化石燃料関連の労働者の失業などが考えられるが、これは他の部門への移行によって解決を図ることになる。

COP24でも、SR1.5は大きな影響をもたらした。あちらこちらで大きな話題にもなった。COPの決定の中に、SR1.5を「歓迎する(welcome)」という表現を入れるかどうか、ロシア・サウジ・クウェート・カタールの4カ国が強硬に反対した。最後には非常に曖昧な表現=「IPCCの努力に感謝する」になったが、議長が妥協案を出したことには多くのグループ・国々から反対の声が上がった。

「1.5℃」はシンボルに過ぎないかも知れないが、ビジョンとしては大きな位置を占めている。これからはSR1.5を武器に企業などへの働きかけを行わなければならない。

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