アマゾン大火災はなぜ起こったのか~印鑰智哉さんのお話し(要旨)

11月26日にグローバル・ジャスティス研究会の11月企画として、印鑰智哉さんのお話しがありました。以下は、その要旨です。文責はATTAC関西にあります。

アマゾン大火災はなぜ起こったのか〜多国籍企業による環境破壊と私たちの食と農
印鑰智哉・日本の種子(たね)を守る会アドバイザー

アマゾンの大半はブラジルが占めるが、実際には南米9カ国に広がっており、パラグアイ、ボリビア、アルゼンチンでも大規模な森林火災が起きている。9月は前年比96%増。今年に入って、300万haを超える地域で火災発生、少なくとも64万haの森林が焼失している。

しかし、大火災の情報は日本では誤って伝えられている。日本で流れている情報には、「いつも起きている。今年は特別ではない」「農民の野焼きで火災が起きている」、「他の地域でも起きている。気候変動が原因」「背景に中国がある。大豆や肉を輸入している」などのフェイクが溢れている、実際には、今年に入って火災は急増しているし、これまでに破壊が進んできていることを考えると、アマゾンに最後の一撃を加えようとしているのが現状であり、大土地所有者やアグリビジネスが「火事の日」を決めて、一斉に火を放っていた。中国については部分的には正しいが、日本の歴史的関与に一切触れていないことが問題。

森林破壊は2004年にピークを迎え、その後減少してきたので、「最近は大したことない」と言う人もいる。アマゾンでは、1990年代から森林破壊が進んでいたが、2003年にルラ大統領就任以降、政府のさまざまな努力のおかげで森林破壊が減少に転じた。2016年の労働党政権崩壊のあと、破壊が再び進んでいる。

アマゾンは、決して手つかずの森ではなく、人のいない森でもない。先住民族が支えている。その先住民族が非常に厳しい状況にある。2018年には先住民族(のリーダー)が135人殺された。先住民族は、土地に対して憲法上の権利を持っているが、大土地所有のために権利の承認が進んでいない。

キロンボ(黒人逃亡奴隷の共同体)が内陸部にあり、彼らも土地の権利を認められているが、実際に承認されている土地は少ないまま。

ブラジルの開発は海岸線から進められ、内陸部は先住民族の国だった。南部、中央部(セラード=乾季が長く、農業ができない期間も長い)、アマゾンで生態系が異なる。内陸部の開発は困難だったが、1960年代にブラジリア遷都とともに内陸部の開発が進んだ。セラード開発は、日本の資金・技術提供によって進展したもの。

ブラジルに植民してきた白人たちは奴隷社会を作ったが、1888年に奴隷制が廃止され、奴隷に替わる労働力として、ヨーロッパ移民、日本移民が入ってきた。こうした人々の民主化要求に対して、農地改革はせずに、内陸部を開墾するように仕向けた。しかしそこには先住民やキロンボが住んでいた。セラード開発のスローガンは「土地なき人を人なき土地へ」だった。JICAのプロジェクトによって、大規模農家がセラードに入植し、先住民や伝統的な住民は押しのけられた。

一方で鉱山開発も進められ、JICAがマスタープランを作成した大カラジャス計画では、鉄鉱石の開発(大規模な露天掘り)、ボーキサイトの採掘・製錬がおこなわれた。他に、金、ダイアモンド、レアメタル、ニオブ、ウランなども存在。こうした鉱山開発の結果、金採掘に伴う水銀汚染が広がった。アルミ精錬のために必要な電力が必要なので、日本のアルミ工場に電力を供給するため、トゥクルイダムが建設された。しかし、電気は地域住民に供給されていない。アマゾンでは、鉱山開発のエネルギー源として、ダム建設がさらに推進されている。まさにアマゾン破壊のダムとしか言えない。

セラードは生物多様性が世界一豊かなところで、紫外線が強く、そのために薬草が豊富にある。日本政府などはセラードを「不毛の大地」と呼ぶが、実は違っていて、「水のゆりかご」と言われ、ブラジル・南米の水源になっている。セラードは「逆立ちした森」と呼ばれているが、それは地上の植物よりも土の中の根の方が長いことを指している。地下40mにまで根が到達し、深い地中から水を吸い上げることができる。しかし、そのセラードの森を燃やしてしまい、大豆畑(いまは遺伝子組み換え作物)にしてしまった。大豆の浅い根では水や土を保持できないため、水がめを破壊してしまったことになる。まさにセラード破壊がアマゾン破壊とつながっている。しかし、日本政府は「不毛の大地を穀倉地帯に変えた奇跡のプロジェクト」として評価している。開発は今も続いているが、その一方で「セラードを自然遺産に」という運動も展開されている。

日本で消費される大豆は、第二次大戦前は8割が中国東北部などで生産されていた。戦後はアメリカに依存していたが、1973年のニクソン大統領による大豆禁輸声明以降、輸入先の多角化が必要となり、ブラジルに目をつけた。大豆の75%は家畜の餌になる。南米の大豆生産量はアメリカを追い越した。現在では中国が輸入量第一位だが、日本の食品企業などは中国に工場を作って、中国に輸入された大豆を加工して、そこから世界に輸出しているという状況もある。

日本政府の新たな農業開発計画として、マトピバ農業開発計画がある。アマゾンとセラードの境界地域で、輸出用大豆やトウモロコシなどを生産しようとするもの。これに対して、先住民族は「マトピバは先住民族に死をもたらすもの」として反対している。

セラードで生産された大豆をアマゾン経由で輸送する「大豆の道」沿いにアマゾン破壊が進んでいる。大豆はかつてはアメリカの穀物メジャーに売り渡していたが、最近では日本の総合商社がブラジルの穀物企業を買収する動きがある。大土地所有者などによって焼かれた森林のうち60%は牧草地として利用される。セラードの大豆畑に追われた牧草地がアマゾンに広がっていった。農地が10%だけなのは、アマゾンの土が農耕に向いていないためで、放棄される農地も多い(3割もある)。

森林火災に対して、ブラジル政府はアマゾン開発の姿勢を変えていない。ボルソナロ大統領は、先住民族の土地を開発しようとした法改正には失敗したが、サトウキビ栽培を認める大統領令を発布した(サトウキビが多くの水を必要とするので、アマゾンの土を破壊する)。ボルソナロがアマゾン基金の運営委員会を解散したため、ドイツやノルウエーはアマゾン基金への援助を停止して、ブラジル政府に圧力をかけている。しかし、日本政府は農業開発を進める動きをやめていない。逆に、経済連携協定の推進やニオブとグラフェンの鉱山開発に協力している。

先住民族への攻撃が増えている。先住民族のポスターには、大豆は先住民族の「血が混じっている」、「先住民族の血をもう一滴も流させない」と書かれている。先住民族は、国内では取り上げてもらえないため、ヨーロッパ諸国に訴えている。もう一方で、鉱山開発による被害も深刻になっている。鉱滓ダムの決壊による汚染で、重金属を含んだ汚水が流れだし、川で生活していた人々は生活できなくなった。鉱滓ダムの決壊に責任を負うヴァーレ社と日本企業(三井物産など)とは深い関係にある。

このままでは、今後のアマゾンはさらに乾燥化が進み、サバンナあるいは砂漠になっていくだろう。自然発火による火災も起きやすくなる。「アマゾンには未来はない」と言う人もいる。さらに生物多様性の喪失や土壌などに蓄えられた二酸化炭素の放出で世界の生態系にも大きな影響を与えるだろう。

そうした事態を防ぐためには、食のあり方を考える必要がある、世界で家畜は700億頭いるが、牛は2%にすぎないのに、牛の飼育には人間が必要とする水の10倍の水が必要となる。植物は大気中にある二酸化炭素を土に戻している。微生物(菌根菌)が植物を支えていて、共生関係にある。菌根菌はグロマリンを放出することで土の団粒構造を作り出す。アマゾンの土が赤いのは、土の中に酸化鉄が含まれているからで、含まれる栄養分が少ない。もし木がなくなると、土はボロボロになる。また、化学肥料や農薬の使用によって、菌根菌が集まらなくなり、菌根菌もいなくなり、土は破壊される。しかし、最近になって、先住民族がテーハ・プレータと呼ばれる黒い土を作っていたことがわかってきた。木炭や食べかすなどを作って微生物を集め、黒い土を500年前から作ってきた。テーハ・プレータのある地域は、アマゾン全体でフランス全土と同じくらいの広さ。それから考えると、かつてはアマゾンに1000万人の先住民族が住んでいたと考えられる。彼らはヨーロッパ人が持ち込んだ病気でほぼ絶滅させられた。いまブラジルの先住民は、2億人の人口のうち100万人で、ボリビア・エクアドルに比べると少ない。先住民族の土地がアマゾンで残された最後の森になっているが、そこに侵入する事件が続発している。先住民族が守られることがアマゾンを守ることになる。

先住民社会との出会いによって、ヨーロッパの近代民主主義思想が生まれたと言われ、先住民族の貢献は大きい。小農の権利宣言(2018年)にもそれは反映されている。生物多様性の保護も先住民族が担っている。いま第6期の絶滅期とも言える状況を迎えている。工業的な食が社会破壊の根幹の原因になっている。食を変えることでローカルな、グローナルな問題を解決できるのではないか?何をするのか、皆さんと考えたい。ブラジルでは森林を復活させようという運動が起こり、成功を収めている。シングー種子ネットワークは、10年で5千ヘクタールの森林を復活させた。

<質疑>
*種子法が廃止された影響は?
+政府は「種苗法」を改正しようとしている。農家が持っているタネの権利を奪おうとしている(自家採種の禁止)。都道府県がやっている種苗事業をすべて農民の負担にしようとしているのではないか。民間企業への投げ売り。民間企業は、種子について特許と同じ権利を主張している。農家を委託生産者に変えていく。21県で種子条例が作られるだろうが、これへの攻撃が考えられている。
*畜産を悪と考えているのか?
+小規模な循環型の畜産は必要であり、悪ではない。大規模な工場型の畜産が生態系を破壊している。

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