神戸石炭訴訟提訴一周年記念シンポジウム どうする?気候危機への対応-変わる世界、日本と神戸の課題-

12月9日、神戸石炭訴訟提訴一周年記念シンポジウムが兵庫県私学会館で開かれました。テーマは、「どうする?気候危機への対応-変わる世界、日本と神戸の課題」で、ゲストによる講演やトークセッションを通じて、この訴訟の意義が明らかになっていく催しだったと思います。

シンポジウムは、久保はるかさん(甲南大学教授・神戸の石炭火力発電を考える会代表幹事)の司会で進められ、まず、基調講演1「気候変動リスクとメディアの役割」(竹内敬二さん・元朝日新聞編集委員)がおこなわれました。

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温暖化という言葉がない時代から報道にとりくんできた。マドリードの熱い議論に応えたい。小泉環境相に期待している面もある。COPの始まった年は、阪神淡路大震災のあった年でもある。温暖化の議論の歴史は短い。その25年で、どう議論されてきたのか、どう変わってきたのか。

今はどういう時期に来ているのか、日本の議論・運動をどう変えてきたか、を話したい。国連事務総長やEU代表が2030年までに半減させようというまでに変わってきた。排出量ゼロは、かつては冗談の中で言っていたことだったが、こういう人たちまで言うようになった変化に驚く。現実の排出は減っていない、議論とのギャップは大きい。

1970年の初めころに議論が始まった。異常気象が噴出したので、研究が始まった。1975年頃の結論は、地球は寒冷化に向かっているということだった!この当時、温度は少し下がっていた。1980年代の日本の科学雑誌は「氷河期がやってくる」のオンパレードだった。科学朝日の特集も「氷河期がやってくる」だった。IPCCの最初の報告書が出たのは1990年だった。IPCCの研究によって、CO2は10出して5しか吸っていないことがわかった。CO2の半減が必要となって、無理だとある種の諦めが漂った。

温暖化問題は、日本では「わくわくする」新たな環境概念として登場した。カタカナ環境概念を勉強するようになった。日本人の環境概念は、自然と人間を一体として考えるものだったが、そこに温暖化という概念が入ってきた。欧州の自然観は、自然を怖いものとして考えていた。

温暖化の新しい議論は、科学(CO2が温暖化を起こすのか、まだ曖昧な話だった)・政治(COPで国家主権を侵して削減目標を決めるという話)・哲学(新たな概念が数多く登場した)の分野で同時進行した。その中でメディアは何を書いてきたか?本当に温暖化を止めるのは無理ではないかという諦めは最初からあった。当時は「武器」がなかった。チマチマした話(こまめに電気を消す)しか書けなかった。環境庁のゆるキャラ「コマメちゃん」が活躍していた。それでは減らないなと思っていた。

世界は少しずつ変わっていった。気候変動枠組条約ができたから、京都議定書ができた。京都議定書ができたから、環境NGO、再生エネが育った面もあった。「どうせできない」というシニカルな感情をアメリカ筆頭に持っていた。日本は「化石賞」をもらっても、あまり関心がない。潰すのに一翼を担ったのは日本。2001年にブッシュ政権が離脱した後、日本は「批准しない」運動を経済産業省などが展開。しかし、小泉首相の一言で批准することになった。カンクンのCOPで、日本政府は京都議定書第2期の削減目標は持たないと宣言。

人間はエネルギーをこれから何に頼るのか?石油の確認埋蔵量は結構少ない。今の年間消費量で割ると40年分。実際には使えないだろうということで、あまり埋蔵量のことは言わなくなった。原子力もチェルノブイリ以降は横ばい。国ごとに大きく違うので、一般化はできないので。小さい国に輸出するのは考えもの。新設原発の工事費が4倍にもなって、フランスですら困っている。京都議定書の頃は、再生エネはほぼゼロ。しかし、いまでは風力・太陽光ともに原子力を上回っている。

チェルノブイリ事故の本当の姿は事故当時、知られていなかった。こんな憩われていたとは。農民の避難は、対ドイツ戦を思い出させる。しかし、対ドイツ戦と違うところは帰れないことだ。家畜を殺して肉にして持っていく。家畜は泣き叫んでパニックになったという。

人類のエネルギー選択は自然に回帰しているようだ。電気に効率的に変換できるようになったから。ローテクの重要性。ゼロ・ミッションに向けたさまざまなムーブメントが重要。

日本は異常気象の警告を受けている。ラグビーの試合中止、マラソンの開催地変更などで、気候リスクの国と認識されている。

週刊「東洋経済」の企業アンケートの結果から見えること。石炭火力発電の大幅縮小が咲いた、原発には意見が言えない、政府に政策見直しを求める回答が半数近く。東電ですら、再エネをもっと送電できると言い出した。電気の実潮流をみると、1%の時期に一杯になるだけでそれ以外は空いているので、いっぱいの時に止めてもらえるという約束さえしてもらえれば、再生エネにどんどん接続すると言い始めた。他の電力会社はまだ保守的で、一杯だと言い続けている。
日本はどんな国になるか?ODA予算の推移は、日本という国の勢いを示す。

社会を変えるために、今までに変わってきたことを使うとき。品位のいい国を作る。温暖化を止める報道の時代に。

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続いて、COP25現地のマドリードから、浅岡美恵さん(弁護士・気候ネットワーク代表)からのビデオ・メッセージが映し出されました。

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浅岡さんは、
「#TimeForAction Is Nowというメッセージが会場のあちこちに貼られている。早く解決しなければならないという声が溢れている。削減目標の引き上げが求められている。しかし、日本政府は引き上げはしない、石炭火力も続けると言っている。日本政府に対する批判は高まっているが、伝わっていない。「ちゃんと仕事しなさい」という声を上げていく必要がある」と訴えました。

休憩の後、基調講演2として「脱炭素化に向けたエネルギー政策の課題」をテーマに、大島堅一さん(龍谷大学教授)が話されました。

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25年前のCOPには参加した。2011年以降は原発を中心に発言してきたが、今日は脱炭素化について話をしたい。

気象庁「気候変動監視レポート」によれば、気候変動が進み、極端な現象の増加、日本の猛暑、考えられないような台風の進路、気温上昇の加速、最高気温35度以上の日数が急激に増えている。CO2の増加が、400ppmを超えた時点で衝撃を受けた。

パリ協定では、2度を十分に下回るものに抑えることが合意された。さらに、1.5度までのものに制限するための努力も合意された。1.5度でもいままで考えられないようなことが起こる、2度になると破壊的になる。実際に1.5度になるのは2030年〜2050年の間で、あと10年で1.5度を超えてしまう。だからいますぐやらなければならない。じゃあ、どうするか?ゼロにしないと止まらない。どうせやるなら早いほうがいい。1.5度にするには、2030年に45%削減、2050年にゼロにしなければならない。

日本のエネルギー政策はというと、第5次エネルギー基本計画は、まだ原子力や石炭に頼るのか、という内容だ。一方で、再エネの目標は低いまま。原子力の目標は達成不可能だし、石炭は温暖化対策に逆行するもので、社会として大失敗であり許されない。原子力は衰退・消滅へ向かっている。今さら再稼働か?石炭火力は、1990年の4倍、2000年の2倍になっている。絶対にやめさせないといけない。

石炭の問題点は、大気汚染による被害を繰り返し、本格的な気候変動対策を数十年遅らせるものにするところにある、石炭火力のコストは決して安くない。LNGよりも高い。しかし、政府は計算しようとしない。石炭火力はあり余るほどあるが、早晩使えなくなる可能性が高い。操業できなくなるので、今のうちにやめるという判断をすべき。石炭火力は時代遅れで、再エネ導入を妨げる。原発と似て、建設費が高く、出力調整が難しい。

しかし、市民やビジネスの世界では変化が起きている。石炭火力は市民から全く支持されていない。ビジネス界は再生可能エネルギーへ向かっている。エネルギーを半分にして、再エネを倍にすれば、ゼロは達成可能、先進的な企業はゼロを目指している、

石炭火力に固執することに未来はない。石炭火力は徹底的に環境破壊的であり、時代遅れ。市民もビジネス界も石炭火力を望んでいない、関電だけ?止めるのは現場から、地域の力で石炭火力発電を止めよう!

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続いておこなわれたトークセッションでは、気候変動訴訟を提起する3地域から、ということで、仙台・横須賀・神戸からの報告がありました。

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仙台・高橋春男さん(仙台PS訴訟弁護団長)

2017.9.27差し止め訴訟を最初に提起。被告のPSは、関西電力と伊藤忠商事がもともと。操業差し止めを求める本訴訟。理由としては、健康被害、気候変動、蒲生干潟の生物多様性。争点からは気候変動が外れてしまったのは残念。「CULPUFF」モデルという大気拡散シミュレーションを重要な証拠として。裁判所は専門委員を選定。健康影響調査の結果を証拠として提出。原告代表者を証人として採用。被告は何も積極的な反論はしない。出力11万キロワットという小規模なのは、環境アセスを免れるため。早ければ、来春以降に結審予定。

横須賀・小島延夫さん(横須賀石炭訴訟・弁護団長)

行政訴訟だけを提起。経産相の環境適合通知の取り消しを求める。周辺の住民だけでなく、海の生物に関連する業種に従事している人が原告となっている。65万キロワットの発電機を2台。横須賀の石油火力発電所の改善リプレースだとして、環境アセスの一部が省略している。しかし、リプレースガイドラインにいう「改善リプレース」ですらない。2002年以降、9基あった発電機のうち、3・4号機以外はほとんど稼働していなかった。ここ数年は、一切動いていない状況。原告らの具体的被害を3点=土砂災害・水害、熱中症、水産資源への悪影響=にわたって主張。

横須賀・鈴木陸郎さん(横須賀石炭訴訟・原告団長)

燃料種の比較がなされていない。温排水も石炭の方がLNGよりも2倍出る。いままでは止まっていたのに、2倍の温排水が出るので、漁業者の原告を出さないといけないということで探したが、相模湾側の漁師になってもらった。東京湾側の漁師にも原告になってもらった。

神戸からは、廣岡豊さん(神戸石炭訴訟・原告代表幹事)、池田直樹さん(神戸石炭訴訟・弁護団長)が報告されていました。最後に、大会宣言を採択して、シンポジウムは終了しました。

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