第3回ウェビナー「気候変動、生物多様性、人間と自然の関係、すべてを変えなければならない!」報告

ウェビナー「What world after the pandemic (パンデミック後の世界)」
第3回(5月14日、午後10-11時[日本時間])
「気候変動、生物多様性、人間と自然の関係、すべてを変えなければならない!」

発言
パブロ・ソロンさん(ボリビア、ソロン財団、元ボリビア国連大使、男性)
リディー・ナクピルさん(フィリピン、債務と開発に関するアジア民衆運動[APMDD、旧称「ジュビリー・サウス」、女性]
ニコラ・アーリン(350.org「350をめざすクライメート・ジャスティス・アクション」、ATTACフランス、男性)
 [注記:ニコラさんの団体名の”350”は大気中の二酸化炭素濃度を表している。産業革命前の約275ppmから2008年には385ppmまで上昇。多くの科学者は、地球環境を維持するためには最悪でも350ppmまで下げる必要があると指摘]

パブロ・ソロンさん(PS)
パンデミックの中の気候変動と生物多様性、問われている新しい戦略をテーマに話し合います。

パンデミックで多くの産業活動が停止している中でも、環境や生物多様性への「攻撃」は続いています。ボリビアではパンデミックの真っ只中に空前の森林火災が起こっています。昨年も起こりましたが、今年はもっとひどくなるでしょう。また、ボリビアだけでなく南米の多くの国で、コロナによる経済危機から回復するためにGMO作物の増産、鉱山開発とくに金の増産など、状況はパンデミック前よりも悪化しています。アグリビジネスや採掘企業は人々がコロナで怯えている間に、やりたいことをやっています。

この状況を変えなければなりません。新しい戦略が必要です。私たちの側が攻勢に立たなければなりません。これまでのような抵抗だけでは不十分です。構造的な原因と闘わなければ状況はますます悪化します。新しいGMOの栽培に反対するだけではなくすべてのGMOに反対しなければなりません。最近では住居の権利が人権であることが社会的に認識されるようになっていますが、食べ物への権利も人権として認識されなければなりません。私たちが何を食べるかをアグリビジネスが自分たちの利益のために決めることをやめさせなければなりません。そのためには大規模なアグリビジネスから土地を取り戻し、小農に分配する必要がありますが、従来の土地の分配・農地改革だけでは不十分で、私たちと自然との関係のあり方を変えなければなりません。それと同時に、ボリビアでは「自然の権利」、「マザーアースの権利」ということが語られてきました。それをどう実践に移すのかという課題があります。パンデミックの問題は私たちと自然との関係に関わっており、私たちがこの問題を無視していたことによって起こったことです。

新しいタイプの民主主義が求められています。人間だけの民主主義ではなく、自然との関係も組み込んだ民主主義です。そうしなければそのような問題に対応できません。民主主義のあり方を再考する必要があります。たとえば選挙で選んだ代表だけでなく、自然の権利を代弁できる先住民族や専門家の意見が反映される仕組みなどです。ドテルテやトランプのような右翼ポピュリストを追い出すだけでは変わりません。

今、森林火災やGMOの問題に環境運動や先住民族の運動だけでなく、健康の問題、人権の問題に取り組んでいる人々や、都市住民、アーチスト、研究者など広範な人々を結集するためにどうするのか。ボリビアではこの間、森林を守るために広範な団体が集まってアセンブリー(総会)を開催しています。すでに3回開催しました。

この問題はボリビアだけではなく、アマゾン地域でも大きな問題になっていて、ブラジルやペルーでも同じことが求められています。このように、地域のレベルで、またグローバルなレベルでさまざまなセクターが集まって行動することが重要です。

ニコラ・アーリンさん(NH)
この2-3カ月間、「いつものビジネス」が完全に止まっており、GDPは落ち込み、環境を汚染してきた産業が活動を停止しています。私たちがCOP会合やそのほかの多くの行動で、一定の成功はあったものの、結局は止められなかったことが、ウィルスによって完全に止まっています。その結果、空気がきれいになり、川もきれいになり、ベニスにイルカが戻ってきたことも伝えられています。だから私たちの運動の中でも、ロックダウンはいいことだ、今のほうが安全に生活できていると言う人もいます。しかしこれは間違った議論です。これは私たちのグローバルジャスティス運動が目指していることではありません。

今起こっているのは、新自由主義が公共サービスや医療を崩壊させてきた結果として多くの人が死んでいるということです。フランスのような裕福な国でマスクが手に入らない、検査ができないということです。できることと言えば外出せずに家にいるということだけです。今、ロックダウンを解除し、経済活動を再開するという動きになっていますが、ILOの予測ではパンデミックの結果、1億9500万人の雇用が失われます。これにはインフォーマルセクターは含まれません。米国だけでも2000万人がすでに失業していると言われています。大きな社会危機であり、多くの人が家賃やローンが払えなくなり、家を失うことになるでしょう。

一方で、エクソンやトタルのようなエネルギー企業や、航空産業などは政府に対して巨額の救済措置を要求しています。企業だけが救済され、人々の救済は考えられていません。感染は有色人種に集中しています。仕事や通勤で感染の機会が多いからです。ウィルスは格差を新しいレベルに拡大しています。しかもこのリスクはハリケーンなどの気候変動によるリスクに変わるものではなく、それに加算されるものです。アジア諸国では数週間後には台風の季節が始まります。この災害とロックダウン、強権的支配が重なると、非常に困難な状況になります。

このように、今の状況はクライメートジャスティスが目指していることとは全く異なります。ロックダウンの結果、ヨーロッパではCO2排出量が60%減ったと言われています。60%削減というのは、2030年に達成するべき目標でした。しかし、これは一時期、せいぜい2-3か月のことです。そのあとにはふたたび、この間の経済的損失を取り戻すためにCO2排出量が元に戻るでしょう。しかも、ロックダウンの間にも資源採掘の事業は継続されています。ロックダウンを解除して「いつものビジネス」、つまり炭素を大量に消費する経済活動に戻る、つまりエネルギー企業や、航空産業、鉄鋼産業を救済することは、気候変動対策を不可能にし、多くの人の未来を奪うことになります。必要なことは公正な回復(リカバリー)です。すべての人たちに未来を保証するような回復です。

一部の人々は感染を抑止するためには権威主義的、独裁的な方法しかないと考えていますが、それは間違っています。感染を抑止しているのは人々のコミュニティー・レベルでの自治です。政府はウィルスとの「戦争」と言っていますが、私たちにとってこれは戦争ではなくケアです。企業の救済ではなく、直接に労働者やコミュニティーを救済するべきです。

今とは違う未来を展望するために、想像力が大事です。「世界の終わり」を想像するよりも「資本主義の終わり」を想像する方が容易です。

リディー・ナクピルさん(LN)
フィリピンは最も厳格なロックダウンをやっています。ロックダウンというのは国によって異なる意味を持っています。マニラではロックダウンによってすべての公共交通が止まり、オフィスも閉まり、工場では労働者はレイオフされるか、賃金が支払われません。外出制限で3日に1回しか買い物に行けないし、病院にも行けません。

コロナウィルスが人々に与えている影響としては、感染や死者の数はヨーロッパと比べるとそれほど多くないですが、人々は経済的・社会的影響について心配しています。ほとんどの経済活動が停止しており、社会的活動や政治活動もほとんど止まっています。議会でも法律が成立しない状況です。ニコラさんが言ったように、「環境に休息を与えている」というポジティブな面もありますが、人々へのコストは大きすぎます。窮乏化、周辺化、無力感が広がっています。

さらに、フィリピンでは強権支配の強化という問題があり、私たちは警察や軍隊の横暴に直面しています。命令を守らない、あるいはマスクをしていない人は檻へ入れられたり、暴行を受けたりします。それも貧困地区でだけです。だから今の状態をポジティブに見ることは危険です。しかし、今は経済をリブート(再起動)する機会でもあります。リブートと言うのは、英語のニュアンスはわかりませんが、リカバリー(回復)とは違います。「公正なリカバリー」ならいいのですが、単にリカバリーと言うと「元に戻る」という意味に取れるので、それには反発を感じます。私たちは「元に戻る」、つまり再び温暖化を加速する、格差や貧困を拡大することを受け入れられません。みなさん同じ意見だと思いますが、今はシステムチェンジの動きをスケールアップする時です。

もちろん戦略を見直し、更新することは重要ですが、その前に、目の前の現実を見ておく必要があります。私たちがフィリピンやアジアで人々がどのようにCOVID19の影響を受けており、どのように対応しようとしているのかを話すとき、一般的な人々ではなく、私たちの仲間、コミュニティーの人たちのことを話します。現実はと言えば、現在私たちの仲間が今直面していることの大部分は、生存のための闘いです。私たちが約40の団体が参加してオンライン会議を開いて、現在どういう活動しているかを情報交換した時、ほとんどの団体は地域で食料を配っていると報告していました。自分たちのメンバーや自分たちが組織しているコミュニティーへの支援の活動です。何をするかを議論する時、まずメンバーやコミュニティーの安全と生存を支援することが大事です。まずこの現実に応えることなしに、議論だけをしていても何も変わりません。

私たちには5つの緊急の課題があります。①人々を支援すること。組織的なキャンペーンとしてです。②弾圧との闘い、③現在の状況で、私たちの活動が厳しく制約されている中で、私たちの闘争、クライメートジャスティスや経済的公正のための闘争をどのように継続できるのか、④政府や財界が「コロナ後」の経済刺激策を進めることを阻止するために介入すること、⑤新しい状況の中で速やかに大衆的闘争を組織すること。

PS
それでは私たちの間での意見交換と、チャットで提出される質問への返答に移ります。初めに私の方から質問です。①「企業の救済ではなく人々の救済」、「ピープル・ファースト」ということで提案が出されていますが、「自然の権利」についても組み込む必要があるのではないか? 人間中心ではなく、自然の権利への攻撃を止めるという観点。②コミュニティーの連帯という点はその通りだと思いますが、同時に、自然の権利を破壊し、人々の安全と生存を脅かしている企業に対して攻勢的な闘いを組織していくことが重要ではないか?
それから、参加者からの質問で「ポスト・コロナの状況の中で、アグリビジネスとの闘争をどう考えるのか?」

NH
経済の「リカバリー(回復)」についてのリディーさんのコメントには同意します。
広範な連合を作っていくことに関して、現在、原油価格の低落にってエネルギー企業が危機にあり、また、航空産業も倒産の危機にあります。それらを救済するのでなく別のシステムへの移行を現実に強制する初めての機会だ。
森林の破壊や自然破壊と闘うということは私たちの生活や食べ物について考え方を変えるということでもあり、パチャママや自然の権利の考え方に学ぶ必要がある。企業や政府との闘いでは、フランスでは市民がいろんな訴訟を起こしている。私体の健康や安全を脅かしているのは医療や公共サービスを壊してきた新自由主義であり、ウィルスではない。

LN
人間と自然との関係のあり方を変えるというのは、新しい状況の中で闘いを継続する上での課題に含まれる。今現在は、生存のために闘っており、それは誰が自然との関係を変えるために闘うのかという問題だ。自然との関係を変えていくには大きな規模の運動を動員しなければならない。広範な運動を作っていかなければならないのと同時に。私たちはより鋭い、包括的なメッセージを伝えていかなければならない。広範な運動を組織するために、公正なリカバリーの提案で一致することは重要だが、それだけではなく、システムチェンジを目指す私たちは、もっと鋭い、ダイナミックな、大胆な人々を鼓吹するメッセージを発していく責任がある。

どのようなアクションを考えるか。新しい状況の中で、政治的圧力をかける方法や、動きを阻止することをこの状況、自分の健康のために外に出られない状況が1か月も2か月も続いている状況で、どのように続けていくことができるのか。さらに、それをどのようにスケールアップしていくのか。これまでのように圧力をかけるだけでは不十分だ。これまでにも何百万人のデモもあったが、十分ではなかった。私たちは課題や要求について多くの答えを持っているが、行動・戦術についてもそれが必要だ。

以下、質疑
<省略>

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