バングラデシュに対する新型コロナウイルスの影響

グローバル・ジャスティス・ナウ(ATTACイギリス)のサイトに掲載されたインタビュー「バングラデシュに対する新型コロナウイルスの影響」を紹介します。なお、日本語訳の文責はATTAC関西グループにあります。
https://www.globaljustice.org.uk/blog/2020/may/5/impact-covid-19-bangladesh

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バングラデシュに対する新型コロナウイルスの影響
ドロシー・グレース・ゲレーロ
2020年5月5日

最近数週間、私は何人かのバングラデシュの社会運動活動家やNGOキャンペーンの活動家に、バングラデシュにおけるコロナウイルスの影響についてインタビューをおこなった。多くの活動家は、パンデミックに対する政府のとりくみに関しての自らの憂慮や見解を公に話すこと、特に海外のメディアやNGOに対して話すことを恐れている。

ヒユーマン・ライト・ウォッチのレポートによれば、バングラデシュ政府は2020年3月中旬以降、自由な言論を厳しく取り締まってきたようだ。ウイルスについての正確でタイムリーな情報を提供する代わりに、警察は学生、活動家、医者を含む人々を逮捕している。そして、人々に対する新型コロナウイルスの影響についての噂や誤った情報を広めたとの罪を着せている。情報省は、新型コロナウイルスの事例についての「噂」を流すソーシャル・メディアやさまざまなテレビ局を監視するために、残忍なデジタル安全法を適用している。

結果として、われわれは逮捕される可能性から彼らを守るために、このインタビューに参加した人々の名前と団体名を伏せることを決めた。

バングラデシュは、1億7千万人を有する人口密度の高い国である。バングラデシュの6083万人にのぼる雇用労働者の多く(85%)は、インフォーマル・セクターで働いている。そのうち、圧倒的多数(93%)は女性である。バングラデシュ経済は、新型コロナウイルスのパンデミックによって大きく影響を受けている。パンデミックによって、工業製品、とりわけ衣料製品の需要が国内でも世界でも減少しているからである。このことは、失業の増加と貧困の深刻化をもたらすだろう。都市の貧困層はもっとも厳しい打撃を受けるだろう。2000万人以上が首都のダッカに住んでおり、ダッカはいまロックダウンの中にある。

飢えがロックダウンを不可能にする

他のどことも同じように、低所得層の人々は、コロナウイルスのパンデミックとロックダウンによってもっとも大きな影響を受けてきた。バングラデシュ統計局によれば、2500万人の賃金労働者のうち、少なくとも1000万人が日々の収入に依存している。ロックダウンが宣言されたあと、交通機関が使えないにもかかわらず、何千人もの衣料労働者が、自らの仕事を守るために必死に何マイルも歩いた。多くの他の人々は、空腹と飢餓に駆り立てられて、食料を求めて外出した。国が主導する緊急食料救済活動は限定的である。そして、ロックダウンの第二週からは、多くの活動家団体が救済活動を続けるのは極端に困難になってきた。

大部分の住民の間で飢えが広がったことは、10年間にわたる経済成長がバングラデシュのもっとも脆弱な人々にまでは達していなかったことを示している。政府は、バングラデシュの国内総生産(GDP)の2.5%にあたる80億ドルの景気刺激策を明らかにした。これはまず産業界に、とりわけ輸出産業にいくだろう。そして、これが低所得層にどのように利益をもたらすかははっきりしない。彼らこそロックダウン状況によって深刻な影響を受けているのに。衣料品工場の所有者は低利で5億9千万ドルを受け取るだろう。

打ちのめされている医療システム

新型コロナウイルスがアジアで拡大し始めてから2ヶ月の余裕があったにもかかわらず、バングラデシュの医療システムは何の準備もできていなかった。コロナウイルスのパンデミックがさらに圧力をかけたことで、事態は不可避となった。検査はまったく不十分にしかおこなわれていない。検査が不足しているため、検査で陽性とされた人の記録上の数字は、真の状況を反映していない。政府は本当の数字を隠そうとしているように見える。活動家は政府の政策を「検査がないからコロナもない」政策と呼んでいる。

多くの医者と看護師は、個人用の防護用具(PPE)を持っていない。ほとんどの医者は、病院で働くことが安全で守られているとは感じていない。医者の中には、いかなる安全措置もなしに、コロナ感染が疑われる患者に対応させられている人もいる。ますます多くの看護師が新型コロナウイルスにすでに感染していることが判明している。

政府は国中の病院に対して、コロナ患者のための隔離病棟を準備するように命令した。しかし、バングラデシュには、人工呼吸器は500台しかなく、ICUの病床も数百あるだけで、そのほとんどはすでに使用されている。多くの病院は新型コロナウイルスの症状が出ている患者を見捨てているのだ。

ロヒンギャ難民への憂慮

コロナウイルスの拡散を防ぐために、バングラデシュは、ミャンマーから避難してきた100万人を超えるロヒンギャ・イスラム教徒が居住する難民キャンプがある南部地域のコックスバザールに厳格なロックダウンを強制した。誰も外に出られないし、誰も中に入れない。
援助関係者は、そこでの感染爆発が貧弱な医療設備を圧倒してしまう可能性を憂慮している。2017年に隣国における軍事的弾圧のあと、75万人近いロヒンギャがキャンプに到達した。

社会運動の対応とイニシアチブ

ロックダウン状況は、社会運動やNGOが会議を開き、他の重要なイベントを企画することを困難にしている。調整活動が困難であるにもかかわらず、過去の共同対応と組織化の経験はさまざまなグループがリソースを動員し、信じられないほどの救済活動をおこなうことを可能にしている。ボランティアが適切な安全服を着て、距離を開けながら、街角に登場している。多くのボランティアはさまざまな青年組織に所属している。資金調達活動は、首都に住む貧しい人々の食料救済のために毎日おこなわれている。その必要性は増大している。100万人以上の衣料労働者が、ロックダウン最初の週だけで職を失ったからである。

国際的連帯の構築を

現在の情勢は極度に不安定で、多くの人々を脅かしているが、インタビューに答えてくれた人々は、コロナウイルス・パンデミック後の世界が、バングラデシュにおける社会運動やキャンペーン・グループ、そして世界中でよりグリーンで、より汚染されていない地球を目指して活動している同様の組織を強化する機会を与えることができるだろうと信じている。まさに社会的に公正で、エコロジー的に健全な未来のための、これまでとは違った政策を再構築するときである。

と同時に、経済成長の限界をシステムの問題として確認し、支配的な成長主導の発展モデルの構造的欠陥を徹底的に問題にするために、世界中の批判的学界や研究機関と再びつながるときが来ている。NGOと市民社会のグループが、運動によって推進されているオルタナティブなエネルギー問題を国家計画の最前線に適用させるため、政府に確固たる圧力をかけるときである。この一部として、森林や自然生息地を破壊し、その結果として健康問題やパンデミックをもたらす汚れたエネルギーから融資を引き上げるように、リージョナルバンクに圧力をかける共同のとりくみを作り出すために、われわれは国内外の活動家ネットワークと再びつながる必要がある。
(このインタビューは、「コロナウイルス・パンデミックについての南からの視点」という一連のインタビューの一つである)

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