ウイルスがあばくモノ⑦

ウイルスがあばくモノ⑦ 

日本でもCOVID-19(新型コロナウイルス)の流行第2波の最中ですが、この機会に[人間社会を問い直そう]と連載しています。今回は経済、取り分け、その仕組み(経済システム)です。経済学の欺瞞こそが「感染症に脆弱な社会」、ひいては、「環境を破壊することによって自らの種の存続も危うくしている社会」の根源という仮説です。本題に入る前に、まず、「組織や法律を含めた政治・社会・経済システムが、何故必要か?」に言及したいと思います。端的に言えば「ヒトという生物種が、あまり社会を形成すること適応仕切れていない」からです。信じたくは無いかとは思いますが。自らの種を「ホモ・サピエンス」と自惚れて名乗っているヒトの歴史は20万年程度、最近縁種(チンパンジー、ボノボ)との分岐から数えても500~700万年位ですが、1000人以上の集団を形成するのは、せいぜい1万年前以後のことでしょう(地域や民族によって異なりますが)。シロアリやアリ(ハチの1種)など億年の単位で集団社会に適応・進化してきた[真社会性]生物とは桁が違います。ちなみにヒトは[亜社会性]に分類されます(大きな群れを作らず、また、階層が分かれていないが、親子が一緒に生活するので)。そして、いわゆる“人間的な関係”とされる十分なコミュニケーションを取れる集団は、せいぜい100名位までと云われています。100人の村なら感情移入し易いのに、1000人の村なら統計的には正確でもピンとこないというわけです。また、さるスタディーツアーで聞き及んだのですが、マレーシア・カリマンタン島の先住民族には、川沿いにロングハウスとうい長屋で生活している村があるのですが、200人以上になると新しい村に別れるそうです。技術とお金をかけて80億のヒトと通信を結べば物理的には通話可能にできますが、個々のヒトとのコミュニケーションを取るにはヒトの性能上不可能です。集団が大きくなるほど挨拶もしなくなるのは意味のあることなのです。本来の集団形成能力に応じた数以上の遙かに桁を超える集団、街や国で暮らすには、法や制度・組織などの人工的に作ったモノ(システム)を介さないと、手に負えないというわけです。しかしながら、長い時間をかけての選択にさらされていない、ヒトの作りしモノですから、その欠陥により長期的には破綻することになります。

ところで、問題はここからです。「朝三暮四」の逸話(故事)の如く※1、ヒトの多くは、短期的利益には敏感ですが、長期的利益には盲目的な傾向が有ります。目前に見えるものには敏感ですが、遠くに起こる事には鈍感な傾向が有ります。そして、身近な人や同族・自国には共感的ですが、そうでない人には無関心あるいは敵対的な傾向が有ります。これらの関係を上手く使えば、「少なくても長期的には自身が損になること」に賛成・協力させて、特定の層だけが利益を得るシステムを作り上げることができます。(経済学者という名の)策士によって。更に問題なことは、そうしてできたシステムが、世代を超えて引き継がれれば、多くの人は疑問にも思わないし、不都合があっても変えられるとも思いません。ヒトの作りしものにもかかわらず! 

 環境上の制約や、ヒトの能力の限界と云ったことは、考えれば当たり前ですが、それを無視したかのような法や制度、特に経済の仕組みを放置すれば破綻は必然です。環境破壊等によって人間社会だけが壊れるなら、自業自得なのですが、他の多く(またはすべて)の生物種の絶滅が道連れというなら、先に滅びるべきは最大加害種であるべきです。環境制約を無視した経済学もさることながら、「無限に成長する経済」も欺瞞の塊です。GDP等の経済上の数値だけが成長(増加)しても、(環境制約等で)実際に分配されるモノの絶対量が増えなければ、普通に働く人が貧困化していくだけです。金融バクチや麻薬商品(依存症を起こさせる様な商品)で暴利を得る人、必需品を買い占めて儲けるような人を除いて。欺瞞と云えば「戦争のプロパガンダ10の法則」と云う本があります(アンヌ・モレリ著、2002年、草思社)。「われわれは戦争をしたくない」「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」「敵の指導者は悪魔のような人間だ」など、戦争を正当化するための10項目が書かれているのですが※2、経済拡大を目的化して経済戦争を正当化する様なこともプロパガンダに支配されているとしか思えません。上述の様に「経済成長が人々を幸せにする」も、その一つですが、「市場原理(自由競争)が社会的必要性を満たす」や「トリックルダウン理論:「富める者が富めば、貧しい者も自然に豊かになる」もそのプロパガンダ候補の筆頭株です。よろしければ、他にも経済戦争のプロパガンダを観察してみませんか?

この様なプロパガンダで、必要性の低い「仕事」が沢山できたとすれば、そこで雇われる人多いことになります。今回の減収による保証も、社会全体ではますます不合理を増やすことになりかねません。そして何より本当に必要な人に行き届かないことを危惧しています。
(以上、特定の読者向けに、2020年8月28日に記した文章を元に再構成しました。)

※1 朝三暮四:中国の故事からの成語で、意味は「目先の違いに気をとられて、実際は同じであるのに気がつかないこと。また、うまい言葉や方法で人をだますこと。」
※2 他の7項目は「われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う」「われわれも誤って犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」「敵は卑怯な兵器や戦略を用いている」「われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大」「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」「われわれの大義は神聖なものである」「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」

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