ウイルスがあばくモノ⑩

ウイルスがあばくモノ⑩

「感染症に強い社会構造にすること」と「様々な(破局的な)環境問題や社会的問題」は同時に解決できるが、この一連の連載意図ですが、解決には、「なぜ?その逆、感染症に脆弱な社会になったのか」の理解が必要です。その最たるモノが「儲かることと社会的に必要なことが、むしろ相反すること」です(貨幣経済下に於ける個人的利益※1と、社会全体の利益の乖離)。それが分かる一例として、前回は「エッセンシャル・ワーカーと持ち上げられることの矛盾を取り上げました(過労や低賃金の場合が多いにもにもかかわらず)。昨今の感染症拡大の状況下で改めて再認識された、『生活により必要・重要な仕事(市民の生命と財産を守るため、社会を支える必要不可欠な仕事)がある』と言う事実です。では、逆に「不要な仕事が存在する」のでしょうか? 最近では、社会人類学者の提唱した「ブルショット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)※2」という言葉もあるようです。著者のグレーバー氏によると「取り巻き、脅し屋、尻ぬぐい、書類穴埋め人、他人へ仕事を振り分けるだけの仕事」を挙げているようですので、個々の業務のことのようですが、「そんな業務が多い社業全体」の重要性はどうなのでしょうか? 個々の業務に着目しているので、分析の視点が私とは違うのですが『社会的価値の低いブルシット・ジョブが高給であったりする一方、社会的価値の高いエッセンシャルワーカーの給料が低いという問題がある。奇妙なことに、労働の社会的価値が高まるほどその仕事の経済的価値が下がっているようだ。(前著六章※)』は、現実を良く表します。社業(会社の事業)全体でも。

 ここで、前回で説明した「利益-外毒性相関図(図2)」で、仕事(業務)を配置すれば解るはずですが、社会的価値が高く、現在不足している産業(仕事)でも、儲からない・持ち出しの事業なら、経済競争が激化するほどより減っていくはずです。逆に、社会・環境に悪くても儲かるなら増えていくのは必然です。社業全体で儲かるからこそブルシット・ジョブも存在できるし、「増やしても社業全体でより利益が出る」なら必然的にその選択をします。あたかも、「コンビニやスーパー等で売れ残り・破棄する商品を増やしても、全体として利益が多くなる選択」をすること・せざるを得ないことと似ています。グレーバー氏の分析と異なり、社会・産業全体では市場原理そのものが「必要性と利益性の逆相関」をもたらすはずです(社業の中での不合理は、グレーバー氏の指摘のように競争が激化すれば市場原理で解消される可能性はあります)。

それでは、ですが、税金を増やして「社会的必要性との矛盾」を解消する方法は、前回指摘した様に、それで上手くいっている所(国)しか上手くいかない可能性が高いのです。また、必要性の程度も様々ですし、個人の価値観にも依存します。そして、社会が複雑になるほど要求も増えますし、政治的な恣意性を増やしかねません(腐敗のもと)。また、経済基盤の弱い国では、その原資を得るための原料や作物の輸出でより環境を破壊し、他国から搾取されかねません。一方、「社会的価値や環境外毒性の違いを内部化できていない貨幣経済・市場経済の問題」と考えれば、それらの違いをフィードバックさせる様な仕組みを導入すれば解決に向かうはずです(直接税金を使わず、通常の経済活動で解決していく様にする)。そして、失業を制御できない現行の経済の仕組みも、フィードバックさせる様な仕組みで同様に解決可能になります。ただし、「社会的に必要なこと」を直接フィードバックし、内部化させようとすると、やはり、政治的な恣意性や「ウソ」の増加、価値観の違いを無視することになりますので、工夫が必要です。まずは、環境や社会指標(のパフォーマンス)で差別して「外毒性」産業を減らして、相対格差を減らしていく方法を取ります(図3)。もう少し具体的には、例えば・・・

ATTAC_BLOG原稿G202001204(ウイルスがあばくモノ10).jpg

 エネルギーの利用量、汚染物質の排出量などに「重み」を付けて累進課税します(縮退圧)※3。多く排出するほど重税になりますから儲かりにくくなります。失業が増えれば、労働分配率に逆累進課税や賃金の分散に累進課税をかければ、雇用を増やし平等化するほど節税になりますから、その圧力がかかります(分配圧)※4。更に、財産税(貯蓄税)などをかけて、逆・非採算枠の産業にお金が流れるようにしますが、具体的にどの産業に流すかは支払う個人が選択できるようにします(転嫁圧)※5。いかがでしょうか?
(以上、特定の読者向けに、2020年11月21記した文章を元に再構成しました。)

※1:個人的利益と記していますが、企業活動など、法人利益を含みます。

※2:デヴィッド・グレーバー「ブルショット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」2020.岩波書店/:「本人でさえ正当化できないくらい完全に無意味・不必要で有害でもある有償の雇用の形態であるが、本人はそうではないと取り繕わなければならないように感じている仕事」

※3:縮退圧:従来の累進課税と異なり、指数関数で定義される、無段階・連続的な税にする。:Z=βX^α+γ 〔注:^αは、αのべき乗〕:エネルギー消費量や汚染物質の排出量など負荷(X)に対して、使えば、使うほど税金(税率Z)を高くする。税による効果は累進率αによって制御するが、税の総額はβを調整することによって同程度にすることができる(税の総額と税の効果を分離できる)。また本文中の「環境や社会指標(X)」に各々の「重み」かける際もβの値で調整できる。γは、必要なら設定する最低課税額(正値)又は足きり額(負値)。なお、企業に課税する場合、「環境や社会指標(X)」を正規従業員数当たりの相対量にすれば、それ自身が雇用安定化効果にもなる。

※4:分配圧:による雇用調整(労働分配率・賃金分散に応じた差別化)。労働賃金をケチればケチるほど、賃金格差をすればするほど、税金を高くする仕組み。縮退圧(※3)と同じ式でも可能だが、法人税など既存の税金に倍加する形に変形することもできる。:Z=β ( X -δ )^α+1 〔注:^αは、αのべき乗〕:差別化率(Z)倍にして、労働分配(率)が低いほど税金を高くする。「社会指標(X)」を労働分配率(少数表示)の逆数とする(δ≧0)。β(X -δ)<0の場合は Z=1と規定する(基準以上なら従来と同額)。同様に、給料等の格差が問題の場合は、格差をつけるほど税金を高くする。たとえば、標準分散(σ^2) 、または標準偏差(σ)などを「社会指標(X)」として使う。


※5:転嫁圧:貯蓄税(財産税)を一定以上から累進的に課税。持ち出し産業などに投資・寄付するなど支払い先(支払い方)は限られるが、本人がより必要と思う相手先に支払う。これは、「良い」とされること多くが「良いとのウソ」である可能性が高いことを前提しています。公金を間違った使い方をすれば、無駄になるばかりか逆効果にもなりかねませんし、取り戻すことはほぼ不可能です。支払う当人が選択できるようにすれば、それだけ慎重になるし、課税感も減ります。騙されても当人の責任ですし、「良いとのウソ」をあばく仕事も支払い先に選べるようにすれば、「ウソ」も減らしていくことができます。

この記事へのコメント