30もの言語で「ネバー・アゲイン」:なぜロシアのフェミニストは抗議行動をやめないのか?(ダリア・セレンコ)

ロシアのフェミニスト反戦レジスタンスの創設者でもあるダリア・セレンコの文章を紹介します。
出典は、http://www.europe-solidaire.org/spip.php?article62083 です。

この中で、筆者はロシアの法律で使用が禁じられている言葉(たとえば「戦争」)については、伏字をつかっています。また、文中にある「宣言」は、本ブログで紹介しています。http://attackansai.seesaa.net/article/485799445.html


30もの言語で「ネバー・アゲイン」:ダリア・セレンコ「なぜロシアのフェミニストは抗議行動をやめないのか?」
2022年4月6日
セレンコ・ダリア

「特別軍事作戦」が開始された翌日、フェミニスト反戦レジスタンス(FAS)が登場した。それは半ばゲリラ的な活動家の運動であり、反戦行動を始め、ロシアにおける情報封鎖を解こうとしている。FASの創設者の一人であるダリア・セレンコは、なぜフェミニストがロシアの反戦抵抗行動の主要な原動力となったのかについて話を続ける。
 
一般化された唯一のフェミニズムというものはないが、さまざまなフェミニズムがあり、そのすべてが何らかの形で、奴隷制に対する闘い、反帝国主義、反軍国主義を表現している。
 
1914年、イギリスの女性参政権運動のメンバーだったシルヴィア・パンクハーストは、自らの母親が女性の参政権獲得に尽力したにもかかわらず、第一次世界大戦を支持したことを「サフラジェットに対する悲劇的な裏切り」と批判している。1915年、サフラジェットたちは[オランダの]デン・ハーグに集まり、「婦人国際平和自由連盟」を結成し、戦争を批判し、共同平和戦略を作り上げた。1916年、アレクサンドラ・コロンタイは、戦争の無意味さ、およびそれと資本主義との結びつきについて、綱領的論文「誰が戦争を必要とするのか」を発表した。1917年、アメリカのフェミニスト、エマ・ゴールドマンは、アメリカの第一次世界大戦への参戦に反対し、有名な「ノー」マニフェストを書いた。彼女は、その中で軍国主義を害悪と呼び、徴兵制を「犯罪、弾圧、不合理な専制」と呼んだ。革命家のローザ・ルクセンブルクは、第一次世界大戦中の反戦扇動のゆえに、計4年間の獄中生活を送ることになった。彼女はまた、「資本主義が支配する限り、戦争は止まらない」と考えていた。
 
フェミニストはイラクやアフガニスタンへの侵攻に反対し、ベトナム戦争にも反対した。1988年には、イスラエルで反軍国主義運動「黒衣の女性たち」が生まれ、パレスチナ和平にとりくんだ。
 
フェミニストは、家庭内、国家、警察、軍隊などすべての種類の暴力がいかに結びついているかをよく知っている。
 
戦争はすべての人に影響を与えるが、とりわけ戦争以前から脆弱であった人々、すなわち女性、クィアの人々、「非覇権的」な国の人々、障がいのある人々に影響を与える。人権分野におけるすべての成果は戦争マシンによって後退させられる。戦争マシンは、多様性、インクルーシブ、人々のグループ間の重要な差異を消し去る物語へと私たちを押し戻す。戦争は私たちを「単純化」してしまうのである。
 
戦争はまた、ジェンダー不平等をさらに悪化させる。歴史が示すように、どんな戦争であっても、レイプされるリスクはどんな女性にとっても数倍になる。最近、兵士がウクライナの女性をレイプしたという最初の(しかし、間違いなくそれだけではない)事例に関する情報がソーシャルネットワークにアップされた。戦争が終わったあと、女性や高齢者、子どもに対する家庭内暴力が急増する可能性がある。生き残った兵士が戦争と暴力(加害と被害の両方)によって壊れて帰ってきて、愛する人の前でPTSDの症状を示すことを予想しなければならない。
 
社会の発展、脆弱な人々への援助、暴力の減少を主張する政治勢力としてのフェミニズムは、**[ロシア連邦で禁止されている言葉]を支持することはできないし、さらに**[同上]を支援することなど到底できないのである。それはまさにフェミニズムが帝国を支持することができないのと同じである。というのは、人、国土、歴史に対する帝国的な見方は、私物化した、レイプによる、征服的な見方だからだ(もちろん、政治的に右翼的なフェミニズムも存在する)。帝国は、自らが見ている人々を脱主体化させる。なぜなら、帝国はあらゆる人を獲物として見ているからである。
 
現在の**[同上]は、ウラジーミル・プーチン大統領の訴えが示すように、ロシアが一種の宣教師として世界にもたらすことにしたとされる「伝統的価値観」の旗印のもとに進んでいる。この「伝統的価値」がどのようなものであるかは、近年の国内政治を追ってきた者なら誰でも知っている。それは、女性やその他の脆弱な人々への搾取や、自らの生き方、自己決定、活動が狭い家父長的規範を超える人々に対する闘争に基礎を置いているのだ。隣国を占領することを、「解放」という名目で規範を押し付けたいという願望によって正当化することも、国内に残る数少ない活発な政治勢力であるロシアのフェミニストが、この**[同上]に抵抗すべきもう一つの理由なのである。
 
FASがどのように活動しているかについてお話ししよう 。私はいま自分の名前を隠すことなく、自分自身のために話す特権を持っている点を強調する。多くの参加者はそのような機会を持っていないからだ。しかし、私たちの運動を推進し、広めるためには、数名の公然化した人物が必要だった。(特に資金調達の場面では)公然化した人物の方が信頼されることもあるからだ。
 
私たちのソーシャルネットワークの登録者は約4万人で、そのうち約5千人が女性や男性の活動家である。ロシアにいる参加者には大きなリスクがあるため、私たちの活動のすべてを公にできるわけではない。しかし、簡単に言えば、私たちは街頭での抗議行動や大衆的な芸術活動をおこない、人々にウクライナの**[同上]について、人々に伝えている。私たちは、反戦の訴え(新聞、ステッカー、リーフレット、メーリングリスト、手紙)を配布し、ロシア反戦基金(ストライキ参加者や意見を理由に解雇された人たちへの援助基金)の設立に参加している。また、敵対行為の震源地にいるウクライナの女性や男性からの手紙を発表し、難民としての経験を説明している。私たちは、それぞれの街頭行動をネットワークの共同作業によって構築し、60以上の都市に「有効なアイデア」を拡散し、増やしている。警察の暴力に直面したデモ参加者の支援もおこなっている。近々、心理的援助・支援グループを立ち上げる予定だ。私たちの中には、ロシア国外にいて、難民救済のためのボランティア活動をしている者もいる。
 
カリーニングラードからウラジオストクまで、全国で45のフェミニスト・グループが活動している。
 
ロシアのフェミニストグループは、強力なネットワークとして、互いに連絡を取り合い、行動に出かけ、反戦の訴えにとりくんでいる。
 
私たちは、セキュリティ上の理由から、総合的な調整用チャットチャンネルを持っていない。しかし、さまざまな人々で構成される小さなチャットグループがたくさんある。どんな人でも、どんな活動家でも、共同宣言で定式化された私たちの主要なテーゼ、つまり「**[同上]反対!」を共有すれば、FASの名前とシンボルを使い、運動のメンバーであることを宣言し、自分の町に支部を開設することができる。
 
この宣言は、他の人々が編集して、その人々に適合するようにできる。すでにサハ語、ウドムルト語、チュバシュ語などのロシア先住民の言語を含む30もの言語に翻訳されている。
 
私たちの運動のアジェンダは反帝国主義でもある。なぜなら、ロシアに住む多くの民族は、ロシア帝国やソビエト連邦が彼らに対していかに暴力的な政策を追求したかについて、彼ら自身の血塗られた痛ましい歴史を持っているからである。私たちは、外に向かっての植民地主義、および内に向けられた植民地主義について話しているのだ。
 
仲間になりたい人に対しては誰にでも、私たちは次のように言っている。
 
「毎日、抗議行動を調整すること、新しい行動を集団で立ち上げ、概念化すること、難民や抗議行動参加者を助ける方法を探すことによって、私たちは意味の惰性と闘っている。**[ロシア連邦で禁止されている言葉]は、市民活動の意味と成果を含む多くの意味あるものを無効にしている。たとえ私たちの運動が**[同上]を止めることができなくても、新しい**[同上]を止め、予防的に行動できる程度に成長することは可能なのだ」。
 
ロシア帝国主義は私たちの現実に根ざしているため、「繰り返すことができる」を「二度とない(ネバー・アゲイン)」にするためには、私たち全員が非常に強力で古い秩序を壊す必要があるのだ。

ダリア・セレンコ

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