中国の環境保護活動アーティストに弾圧

中国の環境保護活動アーティストである堅果兄弟(ナッツ・ブラザーズ)と鄭宏彬が、陝西省榆林市の警察当局に20日間の行政拘留されていることが明らかになった。

堅果兄弟は、2015年7月に毎日4時間、北京の街角で電池式工業用集塵機を使って大気中の微粒子を集めて回り、それで「スモッグレンガ」を一つ作るというパフォーマンスで注目を集めた。その後も、2021年3月には山東省の孝婦河で、赤茶けた色に汚染された川に数十個の「魚」と「唐辛子」を形どったものを浮かべ、漁師に扮して「鍋用の魚はいかが?」と叫ぶパフォーマンスをおこない、SNSで大きな反響を呼んだ。また、重金属で汚染された村々を巡回して、バンド演奏をおこなう活動もおこなった。2022年12月に「ゼロコロナ」政策が解除された後、薬が不足する農村部の高齢者に解熱剤を届ける「農村退熱救助行動」キャンペーンを展開した。こうした活動は、当局による監視の対象となり、たびたび規制を受けてきた。

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堅果兄弟(右)と鄭宏彬(左)

原文 https://aquariuseras.substack.com/p/brothernut-zhenghongbin

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消えた行動芸術家らの行方:陝西省榆林の警察当局に行政拘留20日

小壕兔郷の汚染問題を立て続けに暴露したアーティストの堅果兄弟(ナッツ・ブラザーズ)と鄭宏彬が、陝西省榆林市の警察当局に20日間の行政拘留されていることが明らかになった。

水瓶纪元Aquarius Age
2025年7月4日

7月1日に「行方不明」と報じられていたアーティストのナッツ・ブラザーズと鄭宏彬は、陝西省榆林市公安局榆陽分局が20日間の行政拘留を決定し、榆陽区留置所に拘留されていることが確認された。「水瓶紀元」(Aquarius Age)が両者の家族から得た情報によると、行政拘留の理由は「扇動して騒動を起こした」からだという。これは彼らが小壕兔郷で行った2つの社会的芸術プロジェクトに関係している。それぞれ10日間の、合わせて20日間の行政拘留を言い渡されたが、これは「治安管理処罰法」における「最高刑」に相当する。

一つは昨年8月、郷内の多数の石炭鉱石道路に巨大な「拆」(解体)の文字を描いた件だ。これは複数の大手の風力発電会社が未処理の石炭鉱石で道路を舗装するという違法工事の疑いがあり、村民は汚染防止とセメント製の道路建設を求めており、それを表したアート作品である。

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もう一つは今年6月に小壕兔村第6組で行われた羊の群れに白い旗を結びつけるパフォーマンスアートだ。それは住民の住居区の周囲に天然ガス井があることを示している。過去5年間、がん、脳梗塞、心筋梗塞など深刻な疾患の患者が増加傾向にあり、この地区の住民27人のうち7人が死亡、15人が発病した。

二人の遺族によると、行政拘留で問われた事実関係には異議はないものの、「扇動して騒動を起こした」との断定には同意できないと語った。弁護士を通じて不服申し立ての書類を提出して、受理されたという。鄭宏彬は、二つのアクションはそれぞれ独立した芸術的表現であり、環境汚染の事実を知らしめ、環境問題と汚染被害を受けた村民への世間の関心を高めるためのものだと主張している。それは彼とナッツ・ブラザーズが7年のあいだ何度も小壕兔村を訪れた当初からの願いでもあり、地元に悪影響を与えることはないと信じている。

ナッツ・ブラザーズは以前、「私たちは政府に反対しているのではない。私たちの真の目的は同じかもしれない。汚染問題を解決し、誰が汚染しているのか、誰がガバナンスの責任を負うのかを調査し、小壕兔村の生態系を回復することだ」と公言していた。

小壕兔郷は陝西省と内モンゴル自治区の境界に位置し、石炭と天然ガス資源が豊富な地区。郷の中心から北西30キロメートル以内には、中国石油化学(シノペック)大牛地ガス田、バヤンガオレル炭鉱、ムドゥチャイドン炭鉱、そして門克慶炭鉱の3つの炭鉱がある。これらの開発プロジェクトが生産をはじめると、小壕兔郷の村民は、ガス田掘削時の有毒泥や破砕液を現場に埋めたり、ガスの違法排出、炭鉱廃水の違法排出など、様々な汚染源の影響を受けることになった。多くの樹木や枯死し家畜の羊も死に、村民の発病も相次いだという。

今回の事件に関連する小壕兔村第6組では、ガス井戸が最も早く建設されたこと、居住区との距離が200メートルに満たないこと、そして患者数が他の村や組と比べて著しく多いことを理由に、強硬な要求を表明している。彼らは、政府に対し、村の水質、土壌、空気の質の検査、村民へのがん検診を含む無料の健康診断の提供、そして問題が確認された際には村民と移転交渉を行うことなどを求めている。

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【写真の説明:ナッツ・ブラザーズは自身のアカウント「情況有点複雑」(事情はちょっと複雑でして)や映像アカウント「堅果兄弟nut」で「癌の村に掲げられた投降の白旗」の行動芸術を拡散していた。現在は当局により削除されている】

「楡林警察は、羊に白旗を結びつけることを白い麻製の喪服を着ていることと解釈したそうです。これは地元では縁起が悪いとされていますが、彼らの創作表現は実際には『降伏』という意味合いもつものだったのです。ユーモアと楽しさは、人々を惹きつけ、社会問題の解決を促進する彼らの芸術活動の重要な要素です」。ナッツ・ブラザーズを知る友人たちは、「降伏の白旗を掲げた羊」は、天然ガス井戸の汚染により長年訴えることができなかった小壕兔村第6組の村民の状況を象徴していると紹介した。「村民の病気や医療費の負担の重さ、そして汚染が病気を引き起こすのではないかという不安は現実であり、政府はしっかりと対応すべきです。また、近年ますます狭まっている芸術活動の場に対するナッツ・ブラザーズと鄭宏彬の無力感も含意しています」。

ナッツ・ブラザーズと鄭宏彬が拘束される前に警察は、長年二人と連絡を取っていた小壕兔村6組の住民の携帯電話を捜索し、事情聴取していたという。村民によると、捜査官は二人の行動が「政府のイメージを傷つけた」と述べ、それについてどう思うかとその村民に尋ねたという。村民は率直に「彼らは私たちの代弁をしてくれました。心から感謝しています」と答え、逆に郷政府と区政府の責任のなすりあいと不作為を批判したという。

ナッツ・ブラザーズと宏彬がこの村の汚染問題に関心を抱くようになったのは、2018年5月に鄭宏彬がキュレーターとして「九つの記者会見」というアートアクションプロジェクトを立ち上げ、アーティストたちに「芸術はメディアでもある」として社会問題への介入を呼びかけたことがきっかけだった。ナッツ・ブラザーズもこのプロジェクトに招かれ、村の水質汚染に対する取り組みとして「ソルト・プロジェクト(帯塩計画)」を発足させ、汚染された水を有名なミネラルウォーター「農夫山泉」のペットボトル1万本に詰めて、北京798エリア(芸術地区)と西安市で展示会を開催した。これは大きな注目を集め、玉林市環境保護局が問題の調査に乗り出し、関係する鉱山会社は生産と浄化を中止し、深井戸と浄水施設を設置して稼働させ、飲料水に関する安全問題はほぼ解決した。その後も彼らは「ヘビーメタル(重金属)音楽フェス」、「環境保護ヒーロー選手権」、「羊羊山泉の記者会見」などの活動を続け、小壕兔郷の環境汚染問題へ注目する活動を通じた汚染防止対策の向上に努めてきた。

鄭宏彬はかつてある記事で「芸術はメディアだ」という言葉の含意をこう説明した。「芸術がメディアに取って代わるという意味ではなく、十数年前の『市民記者』や『市民調査』といった個人活動の意義から考えると、アーティストは人々の具体的な状況に向き合い、記者のように調査を行い、情報源を検証し、真実を掘り起こし、権力を監視することができるということです」。ナッツ・ブラザーズは小壕兔郷のすべての家庭を訪問し、影響を受けた村人たちの話を収集し、長いリストにまとめた。鄭宏彬はナッツ・ブラザーズの活動について、「この芸術活動は、独立系メディアの記者らと同じような仕事だった」と論じた。大手メディアの関心が薄れた後も、彼らは独立系メディア記者のように活動を続け、何度も村を訪れてきた。

2024年8月、彼らはこの村で新たに発覚した鉱石汚染事件のために小壕兔村に戻ってきた。2019年から、中国広核グループ〔広東省に原発を持つ国有原子力企業〕、陝西投資グループ、国家エネルギーグループ、中国華電グループが、内モンゴル炭鉱の固形廃棄物である鉱石を使用して、巨大な風力タービンを輸送するための道路を小壕兔郷で舗装を始めたという。村民は、鉱石による汚染のために耕作地がひどく劣化し、農作物が植えられなくなり、羊の死亡率が上昇し、鳥の死骸の数が増え、土壌植生が大規模に枯死したと訴えている。以前から土壌に流れ出ていた重金属が工事によって地下水や塵を通じて農地や畜産エリアに侵入したのではないかと考えられた。

2023年、内モンゴルの警察当局は鉱石道路を舗装した民間企業の責任者と数人の運転手を逮捕し、それぞれ1〜3か月間拘留し、罰金は6100万元(約12億円)に達したが、それは汚染された道路の浄化には使われなかった。ナッツ・ブラザーズはランド・アート(大地芸術)プロジェクトを開始し、郷内のすべての汚染道路に大きな赤い字で「拆」(解体)という字を書き、関係責任者に汚染物質の浄化を訴えた。しかし現段階でも「汚染された鉱石の道路ではなくセメント製の道路の舗装を」という訴えは実現していない。

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