環境・社会を問い直す 生き続けるには(7)
「生き続ける」ため(の条件がわかる)には、逆にどうしたら滅ぶかを理解する必要があるはずです。そこで、前回は「地球破局」や「人類滅亡」を話題にしたのですが、端的に言えば、「拡大主義(持続的成長)」は、いつかは破綻する」ことの説明の一環です。いつかはじける「バブル」の如くです。バブルの最中は、「正常性バイアス※1」が働くので、考えもしない・考えたくもないこととは思いますが・・・。
地球上の多様な生物が存在できるのは、地表面上に多量の液体の水、即ち海が存在するからに他ありません。そのためには地表面上が一定の温度範囲にある必要があります。ところが、地球環境は絶妙なバランスで成り立っており、容易に全球凍結(スノーボールアース※2)にも熱暴走にもなり得るのです。地球自身はほとんど熱を出していないので、宇宙から見た地球の表面温度(宇宙に放出される温度)は、地球の位置での太陽放射(太陽定数)とアルベド(地球の反射能:約0.3)によって決まることになります※3。具体的には約6000Kで流入した太陽光が、地球を温めて約255K(-18℃)の赤外線で宇宙に放出されます。地球に出入りするエネルギー量が等しくなるように調整されるわけです。地球に大気がなければ、地球の表面温度は約-18℃になるはずですが、大気による温室効果があるので、約15℃(33℃差)になっているのです(対流圏以下が温室効果によって温められる)。もし、温室効果がずっと少なければ氷河が発達し、地球の反射能も上がりますので、-18℃より更に温度が下がり、全球凍結に進んでしまいます。この全球凍結は、約23億年前と約7億年前に数回起こったとれています。それでも、生命が途絶えなかったのは、海底まで完全に氷結する前に、火山活動などによって融解したのでは推定されています。この全球凍結という環境変動は、それが原因となって原生生物の大量絶滅とそれに続くカンブリア爆発と呼ばれる跳躍的な生物進化をもたらしたととも言われます。
全球凍結の様なイベントがあったとしても、地球の歴史全体としては、液体の水が維持さてきたからこそ、生命が存続し得たと言えます。ですが、「暗い太陽のパラドックス」という指摘があります。太陽の様な主系列の恒星は、その寿命の間に徐々に光度を増すことが知られています。地球歴史の初期段階では、現在の太陽光度の70% 程度でしかなく、そのため、当時は地球上に液体の海を維持するためには太陽の光が弱過ぎたと考えられる。一方で、このことと液体の水が存在していたと推定される地質学や古生物学の証拠は矛盾すると言う指摘です。
「暗い太陽のパラドックス」について、地球歴史の初期段階の大気は二酸化炭素やメタンなどの量がもっと多く、温室効果がもっと大ききかったためとする説や、それを否定する説もあります。初期段階ではともかく、古生代(約5.4億年前)以後は、複雑な増減があるものの、二酸化炭素濃度をおしなべて減らしてきたからこそ、地球は加熱し過ぎずに、むしろ寒冷化傾向にあると言えます。問題は今後です。太陽が膨張をはじめる数十億年後には地球上に生物が存在し得なくなるとしても、地球システムの未来はあと5億年ほどで、生命の惑星ではなくなるという指摘もあります※4。『太陽が明るくなると言う変化に対して地球はシステムとして応答し、今後も大気中の二酸化炭素濃度を減らしていきます。大気中の二酸化炭素濃度が現在の10分の1になれば生物圏が維持できなくなります。(中略)光合成生物が生きられなくなり、それに連なる食物連鎖が成立せず、生物圏は消滅します。※4』とあります。ですが、私は疑問です。地球物理学的に。「氷期-間氷期」の様に寒暖を繰り返しつつ、このまま寒冷化を進めれば、氷河が増加していきます。氷河で覆われる面積が増えれば、アルベド(反射能)が増加するので、太陽の光度増加を(その程度の速度であれば)相殺できるはずです。二酸化炭素濃度をそれほど減らさなくても地表面上に液体の水が存在できる状態を維持できるはずです。ただし、ヒトが悪さしなければです。ヒトの過剰な経済活動は、地球システムを破壊する自殺行為に私には思えてなりません。二酸化炭素の排出だけでなく、熱帯林の破壊、煤煙、プラスチックス・有害物質の汚染、改変遺伝子汚染・・・。
では、二酸化炭素を排出しない、エネルギー源を手に入れれば解決するのでしょうか? 私としては、問題を先送りするだけで、かえって解決を困難にするという見解です。エネルギーは、保存される量で、いわゆる「エネルギーを使う」は、別のエネルギーを「熱」のエネルギーに変えるこです。熱を捨てる行為になるのです。前回紹介した「ジオ・カタストロフィー※5」には、『一般に、地球上に降りそそぐ太陽エネルギーの0.2ないし0.3%が風や波の運動エネルギーに変換され、気象をつかさどっている。それは現在人類が消費しているエネルギーの約60倍に相当する。それを著しく超える熱放射は異常気象を招き地球全体がヒートボールと化すであろう。※5』とあります。「持続的な経済成長」と叫ばれますが、年3.5%の成長を100年続ければ約31倍に、200年続ければ約千倍になります。国際格差も(過剰浪費国並に増加で)解消しようとすれば、エネルギー・資源の利用量は5倍10倍と増えることを意味します。2、3桁の増加など既に増やしてきた実績もあります。二酸化炭素を排出しないエネルギー源を手に入れたとしても、利用するエネルギー量を何桁も増やしていけば、その廃熱だけで、気象に致命的な影響を与えることになります。
(以上、特定の読者向けに、2025年11月21日に記した文章を元に再構成しました。)
※1:心理学用語で、自分にとって都合の悪い情報を無視したり過小評価したりするという認知の特性のこと。
※2:地球全体が赤道付近も含め完全に氷床や海氷に覆われた状態。
※3:ステファン=ボルツマンの法則より、熱輻射により黒体から放出されるエネルギーは熱力学温度の4乗に比例する。
※4:松井孝典「宇宙人としての生き方 -アストロバイオロジーへの招待-」2003.岩波新書
※5:坂田俊文監修/ジオ・カタストロフィー研究会編「ジオ・カタストロフィー 上巻 人類滅亡のシナリオ」1992.NHK出版(p.54)
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