2025年の中国民衆闘争ベスト10

SNSを通じて中国国内の労働者や農民らの抵抗闘争を報じるXのアカウント「昨天」(前日)は、前日に発生した中国国内のさまざまな民衆闘争を連日報じています。最近「2025年 民衆の抵抗運動ベスト10」をその時の映像を交えて発表。

「昨天」の主宰者は2010年ごろから中国社会の様々な衝突をSNSなどで報じて2016年の逮捕され4年の実刑判決を受けた盧昱宇さん(1977年生まれ)。2020年に満期釈放後、2023年にカナダに移住しています。ちょっとまえに台湾のウェブメディア「報導者」でインタビューされてました。

以下「2025年の中国の民衆闘争ベスト10」訳。

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◎名もなき英雄たちに捧ぐ:2025年の中国民衆闘争ベスト10
Xアカウント「昨天」@YesterdayBigcat  
2026年1月6日16:10
https://x.com/yesterdaybigcat/status/2008435957826207815

萬馬(ばんば)齊(ひと)しく喑(いん)ずる(=沈黙が支配する)2024年に別れを告げ、2025年は中国における庶民の闘争が少しずつ息を吹き返す一年となった。生存をかけてたたかう農民や労働者、尊厳を守るために徹底してたたかう学生や親たち、さらには他人が受けた不当な処遇のために立ち上がるネット市民まで、恐怖に正面から向き合い、沈黙を拒む人々がますます増えている。

この年、怒りはもはやアトム化された囁きにとどまることはなかった。ネット空間では数千万人もの「インターネット・ママ」たちが〔医療事故で亡くなった〕小洛熙のためにメッセージをつなぎ、陝西省蒲城では面識もない学生のために数万人の市民が街頭に繰り出した。雲南省と貴州省をまたぐ高原の地では、農民たちが「先に習近平の祖先の墓を掘り起こせ」とまで叫び、四川省江油では抗議の市民から「民主を取り戻せ」という近年では珍しい政治スローガンが叫ばれた。

以下は、「昨天」(昨日)が選定した「2025年の中国の大衆闘争ベスト10」である。

【第10位】
甘粛省天水幼稚園毒物混入事件にたちあがった保護者たち
(2025年7月1日~7月20日、甘粛省天水市麦積区)

この事件は、利益追求のために倫理が踏みにじられた典型的な「人災」事件だ。天水市麦積区にある褐石培心幼稚園が、園児募集のために給食の見栄えを良くしようとして、長期間にわたり有毒な工業用顔料を幼児の食事に混入し、200人以上の園児が鉛中毒を発症した。さらに衝撃的だったのは、地元の疾病管理センターの検査結果が、外部の有名な病院の診断と大きく食い違っていたことである。信頼できる治療を受けるために各地を奔走した保護者たちは、公権力が「安定維持」の名のもとに真相を隠蔽しようとしている現実を痛みをもって暴き出した。
7月20日、保護者に不利な合意書が当局から強要され、保護者の代表が警察から不当な暴力を受けたことで、多数の保護者が絶望に駆られながら街頭に繰り出して主要幹線道路を封鎖した。保護者らの抗議は結局弾圧されたが、その粘り強い行動によって、中国の食品安全問題の底知れぬ闇を社会に示すことができた。

【第9位】
湖南省長沙のフードデリバリー配達員による反差別連帯デモ
(2025年12月22日~12月23日、湖南省長沙市)

12月22日、長沙市にある合能璞麗団地が、配達員に対する差別的な立ち入り禁止規定を設けたことで、配達員らとトラブルになった。住民が配達員を侮辱したことが引き金となり、配達員の怒りが爆発。数百人の配達員がすぐに集結し、10時間以上にわたり団地の正門を封鎖して侮辱した住民の謝罪を要求した。その夜未明には団地には数百人の警察が配置されたが、配達員たちは市内を数時間にわたりバイクでデモ走行した。中には中国の皇帝の黄袍(こうほう)と冕冠(べんかん)を着用して抗議する者まで現れた。結末もきわめて劇的だった。各社の配達プラットフォームの配達員らが連携してこの団地をブラックリスト化し、配達を事実上拒否することで、住民全体がフードデリバリーを利用できなくなった。〔差別的扱いを受けがちな配達員への〕階級差別に対する極めて有効な反撃となった。

【第8位】
雲南省昆明での露天商と地域管理局員の衝突
(2025年9月27日~9月28日、雲南省昆明市官渡区

経済が低迷する中、昆明市の夜市「海楽世界」の露天商にとって、小さな屋台は一家の最後の命綱であった。しかし地元政府は、「新規定・新登録・新規の徴収」という収奪のサイクルで露天商を苦しめ、従わない露天商に対して管理局員による暴力的な立ち退きを迫った。
9月27日夜、追い詰められた露天商たちがついに反撃に出た。完全武装した地域管理局員や警察数百人を前に、露天商らは身の回りにある調理器具や机、椅子を手に取り応戦した。鍋や茶碗が飛び交う大混戦は6時間に及んだ。これは単に不当な徴収への抵抗ではなく、経済不況下で生存権を守ろうとする最下層の民衆と略奪的な都市管理行政との命を懸けたたたかいだった。

【第7位】
海南省瓊中で数千人の農民が「海膠集団」を包囲する
(2025年10月31日、海南省瓊中)

国有企業の海膠集団が土地所有権を一方的に主張し、村民が植えた数千本のビンロウ樹を乱暴に伐採したことに対し、瓊中県那柏村の村民は沈黙しなかった。
10月31日、数千人の村民が「海膠集団を打倒せよ」と訴えて行動を起こし、農場を包囲して車両や施設を破壊した。この行動は海南島の全島に共鳴を呼び、各地の若者が車で駆けつけた。激しい反発を前に、海膠集団は最終的に妥協し、58万8600元の補償金と10万元の再植林のための費用を支払った。これは、激しいたたかいによって実質的勝利を得た数少ない事例の一つである。

【第6位】
深圳市「易力声」で3000人が変則的リストラに抗議し大規模ストライキ
(2025年12月4日~12月12日、広東省深圳市)

大手の電子部品メーカー「易力声」が吸収合併され工場を移転、さらに「週5日、1日8時間、超低賃金」という制度変更の結果、労働者の収入が2000元以下に落ち込むことになり、ベテラン労働者に自己都合退職を迫り、補償金の支払いを回避しようとたくらんだ。本来労働者を守るべき8時間労働を定めた労働法が、低賃金と組み合わされることで「合法的なリストラ手段」と化した。
これに対し3000人の労働者が8日間に及ぶ大規模なストライキを打った。12月10日夜、数百人の労働者が警官部隊と対峙して工場の正門を包囲し、警察に拘束された仲間を解放させるという、過去に例を見ない事態も生じた。最後には会社と当局の圧力によってストライキを解除して復職を余儀なくされたものの、女性が中心の抵抗する労働者らの粘り強さと団結は、絶望の中から噴き上げる中国労働者の力を示した。

【第5位】
雲貴高原における強制火葬反対運動
(2025年11月~12月、雲南省鎮雄、貴州省息烽・遵義など)

葬儀制度の改革を口実にして利権をあさろうとする地方政府が、画一的な火葬行政改革を強行した。墓を掘り起こして強制的に火葬するというひどい行政対応が農民の怒りに火をつけた。11月初旬、雲南省鎮雄県中屯鎮で数千人の農民が政府の路上封鎖を突破し、土葬禁止令を打破した。このたたかいは瞬く間に拡大し、貴州省息烽では「先に習近平の祖先の墓を掘り起こしてからにしろ」という訴えが響き、農民らが県長を包囲して跪かせるなど、権力に対する極めて強固な対抗意識を示した。遵義市正安では2000人の農民が葬儀防衛隊を結成し、遺体を強奪しようした権力の部隊を撃退した。二省三市に及んだこの抵抗運動によって、長年続いた強制的な火葬政策は瓦解した。

【第4位】
「インターネット・ママ」たちが寧波の「小洛熙」を医療の闇から守る
(2025年11月~12月、中国各地およびネット空間)

手術件数のノルマ達成のため、寧波市婦児病院の医師は嘘の病気の診断を捏造し、生後5か月の女児・小洛熙に不要で高リスクな開胸手術を実施。女児は手術中に死亡した。母親の鄧さんは真相究明を訴える最中に暴行を受け、病院側が組織したネット工作員らによって中傷にさらされた。
この事件はインターネットを通じて広範囲に抗議を惹起した。病院側に都合よく書かれた手術報告が公表されると、数千万人のネット市民が「インターネット・ママ」となり、当局のネット検閲と世論操作に抵抗する情報戦を展開した。車やバッグにスローガンを貼ったり、この事件を伝えるためにネット投稿を次々に転送する「寧波の風」がインターネットを通じて全世界へと広がった。隠蔽されそうになった医療事故は、全国からの批判を受け、ついには政府が無視することのできない世論を作り出した。

【第3位】
河南省許昌第六中学で学生や保護者ら数千人が抗議
(2025年5月23日~5月25日、河南省許昌市)

5月23日、13歳の女子生徒・呉怡佳が、担任教師による長期の侮辱的体罰と孤立に耐えかね、ビルの16階から飛び降りて命を絶った。学校と関係教員は家庭環境に責任を転嫁した。この傲慢さが世論を激怒させた。
25日には数千人の学生、保護者、市民が学校を包囲した。学校の壁には「血債血償(血で代償をあがなえ)」という文字が描かれた。警察は特殊部隊を投入し、催涙スプレーで強制排除を行った。被害者の父親は政府からの圧力で事態を収拾することを余儀なくされたが、インターネット上に書き込まれた「私たちがあなたの無念を晴らしたよ」という学生たちのメッセージは、恐怖に打ち勝ち、何があっても屈しないという若い世代の意志を示した。

【第2位】
陝西省蒲城で学生が転落死した事件を契機に数万人が抗議
(2025年1月2日~1月6日、陝西省渭南市蒲城県)

1月2日、蒲城職業教育センター(職業専門学校)の学生だった党昶鑫が転落死した。学校はすぐに「高所からの転落事故」と断定したが、家族を軟禁して携帯電話を没収したことで市民らの怒りを買った。5日夜には警察が遺族に暴行して連行したことで事態は一気に悪化した。翌6日、数万人の市民らが街頭に繰り出して、職業センターの校内に突入して施設を破壊した。これは2025年のなかでも最大規模のたたかいであり、この年の一連の大衆的な闘争の幕開けとなった。

【第1位】
四川省江油で数千人がいじめ事件への対応に抗議
(2025年7月22日~8月4日、四川省江油市)

3人の学生による残虐ないじめ事件が明るみになったが、警察は被害者が「軽傷である」ことを理由に、加害者に対して軽い処分だけで済まそうとした。しかしそれが社会的な怒りを招き、8月4日には数千人の市民が正義を求めて街頭に繰り出した。警察は二度にわたり暴力的鎮圧をおこなった。それでも市民らは退かず、「民主主義を取り返せ」と叫んだ。それは市民らの訴えが、一つの刑事事件の処理に対する不満から、政治体制そのものに対する問いと批判へと昇華した、2025年の中国の大衆的たたかいの象徴的な瞬間でもあった。

【名もなき英雄たちに捧ぐ】
これらの人々は生まれながらの英雄ではなく、ごく普通の人々である。しかし、自分自身や他者のために立ち上がったとき、驚くべき勇気を示した。人々の名前の多くは歴史に刻まれることはないだろう。そして今なお獄中や孤独の中で抗議の代償をあがなっている人も少なくない。それでもこの無名の市民らは、自らの自由と血と涙を引き替えにして、鉄のカーテンにひとつの亀裂を刻み込み、微かだが、確実に一筋の光を照らし出したのである。

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