アンジェラ・デイビス:ブラック・ラディカリズムの将来についてのインタビュー(その1)

アンジェラ・デービスのインタビュー『ブラック・ラディカリズムの将来について』を紹介します。

原文は以下で読めます。
https://www.versobooks.com/blogs/3421-angela-davis-an-interview-on-the-futures-of-black-radicalism

このインタビューは、『ブラック・ラディカリズムの将来』[訳注:二〇一七年に出版された論文集。未邦訳]に掲載されたもので、この本は「黒人のラディカルな伝統」についての主要な活動家、学者、思想家の論文・インタビューを収録しています。ここに集録された論文は、「黒人のラディカルな伝統」を定義したセドリック・ロビンソンの業績を認め、賛辞を送り、ブラック・ラディカリズムの過去・現在・未来、およびそれが他の社会運動に与えてきた影響を見つめています。セドリック・ロビンソンが展開したもう一つの説得力を持つ考え方である人種的資本主義(レイシャル・キャピタリズム)(訳注一)は、黒人の抵抗運動と反資本主義との間の結びつきを探りながら、今日の国際的な社会運動と結びついています。ここでは、『ブラック・ラディカリズムの将来』から、ゲイ・テレサとアレックス・ルービンによるアンジェラ・デービス(訳注二)へのインタビューを掲載します。日本語訳の文責は、ATTAC関西グループにあります。

(訳注一)資本主義はレイシズムが浸透していた封建社会から生まれた、つまりレイシズムは資本主義の副産物ではなく、資本主義がレイシズムという土台の上に成立したという考え方。ナオミ・クラインによれば「白人優位主義と近代資本主義は切り離せないこと」を指す用語で、セドリック・ロビンソンが提唱した。この人種的資本主義を批判的に考察し、それと闘ってきたのがブラック・ラディカリズムであり、「黒人のラディカルな伝統」である。

(訳注二)アンジェラ・デービス(一九四四〜)は、黒人解放運動、フェミニズム、刑務所廃止運動などで活動してきたマルクス主義哲学者。ブラックパンサー党や共産党(一九九一年に離党)に所属していた。一九七一年に冤罪事件でテロリストとして逮捕・起訴されたが、歌手のアレサ・フランクリンやミック・ジャガー、ジョン・レノン、オノ・ヨーコらも加わった国際的な救援活動の結果、釈放と無罪をかちとった。

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アンジェラ・デイビス:ブラック・ラディカリズムの将来についてのインタビュー

(問)あなたは、学問研究の中で、刑務所廃止運動、ブラック・フェミニズム、大衆文化、ブルース、ブラック・インターナショナリズム、パレスチナに焦点を当ててきた。総合すれば、この研究はどのようにして「黒人のラディカルな伝統」から発想をえているのか、そしておそらくそうだと思うが、どのようにして「黒人のラディカルな伝統」へと向かっているのか?

(答)セドリック・ロビンソン(訳注三)は、社会的・文化的歴史を形成する上で、黒人の急進的理論家・活動家が果たしている役割について考えるようにわれわれに挑戦してきた。そうした歴史は、われわれの考えや政治的実践を人種的資本主義の根源的な批判へと結びつけるように、われわれを鼓舞している。彼が長生きして、より若い世代の学者・活動家が彼の「黒人のラディカルな伝統」という概念をどのように取り上げ始めたのかを感じとれたのは嬉しいことだ。彼はC. L. R.ジェームズ、W. E. B.デュボイス、リチャード・ライトの研究にもとづいて、ブラック・マルクス主義における重要な系統研究を発展させた。もしアメリカの黒人運動やマルクス主義人類学を含む彼の研究を全体として見るならば、H. L. T.クワンが指摘したように、女性がいかに「黒人のラディカルな伝統」の形成に中心的役割を果たしたかを理解できる。クワンによれば、「あなたの研究の中で、女性と抵抗運動の役割に大きな焦点を当てているのはどうしてか」と質問されたとき、ロビンソンは「どうしてだって? 実際には、あらゆる抵抗運動はジェンダーの中に現れ、ジェンダーとして現れるものだ。ジェンダーは実に抑圧の言語であるとともに抵抗運動の言語でもあるのだ」と答えたという。

私は歴史の使用法について多くのことをセドリック・ロビンソンから学んだ。その中には、歴史を理論化する-あるいは歴史が自らを理論化することを可能にする-方法が含まれていた。その方法は、われわれが現在を理解するために、そしてより居住に適した未来を一緒に思い描くわれわれの能力にとって、決定的に重要である。セドリックは、自分が歴史を熱心に掘り起こすのは、現在の政治的目標を打ち立てるためだと言ったことがある。私は『ブラック・マルクス主義』[訳注:一九八三年に出版されたロビンソンの代表的著作]を最初に読んだときからずっと、彼のアプローチに親近感を感じてきた。私が-獄中で執筆して-初めて発表した論文は、黒人女性と奴隷制をテーマとするものだったが、実は黒人母系家族制いう有害な-しかし、ますます広まっている-説に反論しようとするものだった。そうした説は、政府の公式レポートでも述べられているが、それとともに、一九六〇年代後半から一九七〇年代初め頃までの黒人運動の中で広く流布されていた男権主義的考え方(たとえば、黒人男性の支配権を確立するために想定された、ジェンダーにもとづく指導部ヒエラルキーの必要性)を通じても表現されていた。当時は、私の仕事についてそのようには考えていなかったけれども、私は今日では、その研究を黒人のラディカルな伝統、それゆえフェミニズム的な伝統をより可視化しようとする試みに結びつけることをためらわないのは確かだ。

その新たな分野の形成-批判的な刑務所研究と明確な刑務所廃止運動の枠組み-は、われわれがアメリカ史の中で「ラディカルな再構築」と言っている時期との有名な系統的関係を通して、そしてもちろんのことだが、デュ・ボイスの研究との関係および歴史的なブラック・フェミニズムとの関係を通して、自らを「黒人のラディカルな伝統」の内部に位置付けている。サラ・ヘイリー、ケリー・ライル・ヘルナンデス、そしてエキサイティングな新たな世代の学者たちの研究は、彼らの価値ある研究と原則的な行動主義とを結びつけることによって、「黒人のラディカルな伝統」活性化させることに寄与している。

反レイシズム行動主義のあらゆる世代にとって、狭い意味でのブラック・ナショナリズムが不死鳥のようによみがえり、われわれの運動の忠誠心を要求しているように思える。セドリックの研究は、部分的には彼の時代(私の時代でもある)の狭い意味でのブラック・ナショナリズムに応えようとする欲求に触発されたものだ。もちろんのこと、逆効果を招くだけでなく、われわれの目標であるべきもの、つまり黒人の繁栄、それゆえ人類の繁栄と敵対するナショナリズムの様式が復活しているのを目撃するのは、本当に失望させられることだ。それと同時に、新たな青年の部隊-「黒人の命は大事だ」、BYP100(訳注四)、ドリーム・ディフェンダーズ(訳注五)-が、クイアーの理論と実践の価値を強調するブラック・フェミニズムが変化した新たな国際主義を形成するのにいかに役立っているかを目撃するのは、きわめてエキサイティングなことである。

(訳注三)セドリック・ロビンソン(一九四〇〜二〇一六年)は、カリフォルニア大学サンタバーバラ校で、黒人研究科と政治科学科の教授を務めた。
(訳注四)BYP100は、「ブラック・ユース・プロジェクト100」の略。二〇一三年に結成され、地域共同体の組織化、黒人の投票行動促進など、黒人・フェミニスト・クイアーに焦点を当てた活動を展開している。
(訳注五)ドリーム・ディフェンダーズは、警察による暴力、刑務所国家に反対する団体で、アメリカにおける黒人や有色人種、その他の抑圧された人々に対する殺人および警察国家の即時終結、アメリカの貧困層の囚人の即時解放、同じ人種の陪審員による裁判を求めている。

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